なぜ拡張型が効果的だと考えられているのか
拡張型のスケジュールに関する研究をご紹介する前に、拡張型のスケジュールが効果的だと一般的に考えられているのはなぜなのか、理論的な背景を考えてみましょう。
「拡張型のスケジュールが効果的である」という主張の理論的背景として、以下の2つの原則が挙げられます(*2)。
原則2:復習と復習との間隔が長ければ長いほど、記憶が強化される度合いが強まる。
原則1は、「記憶を正しく想起することで、記憶が強化される」というものです。
例えば、「oxygenの意味は何ですか?」と質問されて、「酸素」という正しい意味を思い出せた場合の方が、想起に失敗した時よりも記憶が強化されるということです。これは、「思い出す」という行為を行うことで記憶へたどり着くための経路が強化され、記憶が取り出しやすくなるためだと考えられています。
原則2は、「復習と復習との間隔が長ければ長いほど、記憶が強化される度合いが強まる」というものです。
例えば、oxygenという新出語を学んだばかりの学習者がいたとします。この学習者に、学習の直後に「oxygenの意味は何ですか?」と尋ねた場合と、学習の1週間後に同じ質問をした場合とでは、後者の方がより記憶保持を促進すると考えられています。
これは、学習の1週間後にoxygenの記憶を想起した方が、学習の直後に想起した場合と比較してより大きな心的努力(mental effort)を必要とし、この心的努力が記憶保持を促進すると考えられているためです。
原則1と原則2は、それぞれ相反する内容です。なぜなら、原則2によれば、復習の間隔は長ければ長いほど良いことになります。しかしながら、原則1によると、復習の間隔が長すぎるのは好ましくありません。
原則1によれば、記憶を正しく想起できた場合に限って記憶が強化されます。復習間隔が空きすぎてしまうと、忘却が進行し、記憶を正しく想起することが不可能になるため、あまりに復習間隔が長くなるのは逆効果です(*2)。