「母性」「父性」は「当事者意識」では

私は「母性」という言葉に懐疑的にすらなった。私が育休中、夜中に娘がどんなに泣いても、全く起きなかった夫が、自分が育児の当事者になった期間は、泣くとすぐに起きるようになったのだ(逆に私は、昼間の仕事の疲れからか、育児を任せているという安心感からか、全く起きられなくなった)。「母性」というものは本当に生物学的なものなのか、それは「育児への当事者意識をどれだけ持っているか」なのではないか、と感じるようになった。

思い切って、夫に育児を全面的に任せる期間を作ったこと。育児の当事者として、夫の意識も高まったこと。それらの結果として共働きを続ける同士としての夫の“戦闘能力”が高まることが、どれだけそのあとの生活をラクにしたか。

夫の育休には他にもいくつか効果があった。「なんちゃって」だった夫は、家事に慣れると、昼間の空いている時間は保育園に時々ボランティアに出かけていた。園の庭の草むしりなどをしていたらしい。それによって保育園での存在感は圧倒的に私より夫の方があったし、娘の卒園後も保育園には関わり続けている。
 
もっと大きいことは子どもとの関係ではないかと思う。中学生になった娘は、私に対しては強烈に反抗することはあるものの、なぜか夫とは仲良し。育休期間に育まれた家事育児の「当事者意識」のおかげで、娘といる時間も長い。私自身が猛烈サラリーマンだった父親とそんなに深く話したこともなければ、一緒にいたこともないので、夫と娘の関係はとても新鮮だ。

赤ちゃんのときから子どもとふたりきりの時間を多く過ごした父親は、大きくなっても過ごすことが自然になる。そして一緒に過ごすことが当然という空気は、子ども自身が一番感じる。そこには信頼関係も生まれるだろう Photo by iStock

時期も期間も取れる範囲は人によって違うと思う。職場や上司によってはまだまだ厳しい環境の人もいるだろう。それでも、少しでも取れるなら取ってみて欲しい。そして女性側も思い切って、任せてみて欲しい
 
育休制度には「男性は子の生後8週までに1度目の育休を終えると再取得できる」という仕組みもある。産後一番大変な時に取り、さらに妻の復職に合わせて取るのもいいだろう。
 
出産を経験したことで「母親になった」と実感できる女性と違って、父親はいつ「父親になった」と実感できるのか。育休は男性に本当の意味で父親になってもらう期間でもあり、働く妻にとっては家事育児の本当の意味での頼れるパートナーになってもらう修行期間なのだと思っている。