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人気漫画『きのう何食べた?』が女性たちの心をつかむ「納得の理由」

「平成の豊かさ」とは何だったのか

『きのう何食べた?』の女性人気

昨年、テレビ東京系でドラマ化された『きのう何食べた?』の原作は、青年マンガ誌『週刊モーニング』(講談社)で、2007年から現在まで続く人気連載である。主に男性読者を対象とした雑誌での連載だが、女性のファンも多い。この作品の何が、女性たちを引きつけるのだろうか?

原作者は、BL(ボーイズ・ラブ)を描く作品をいくつも発表してきたよしながふみ。本作も、ゲイを主人公に据えている。まず、大まかなストーリーを整理してみよう。

 

主人公の筧史朗は、弁護士。同居する恋人、矢吹賢二は、美容師だ。最初、43歳と41歳だった2人は、巻を追うごとに順調に年を重ね、50代に入って食が細くなる。どこにでもいそうな中年夫婦2人暮らしの日常を、男性同士のカップルとして描く。作品に所帯くささが漂うのは、話の中心にあるのが日々の食事だからだろう。史朗と賢二の食卓が最もひんぱんに描かれるが、周りの人たちの食卓も登場する。

史朗は、子供をアテにできない老後のために貯金に勤しんでいるので、金銭感覚は庶民的で、むしろお金に細かい。料理には、めんつゆを多用するが、カロリーを摂り過ぎないよう気をつけている。一汁三菜をこまめに準備し、和食をよく作るが、塩麴料理、油淋鶏、タイカレーなどの流行の料理も作る。ジャムやクレープ、バナナケーキなど、簡単なスイーツを作ることもある。

東京郊外に、おそらく一流企業をリタイヤしたと思われる史朗の父親と、専業主婦で生真面目な母親が暮らしている。史朗は一人っ子。母は息子が帰ると、年寄り2人では食べられないから、と揚げ物を作る。

賢二は、史朗を大好きで焼きもち焼き。目の前の欲望に忠実なタイプで、ときどきハーゲンダッツのアイスをスーパーより割高なコンビニで買ってくるので、史朗に叱られる。史朗が作る料理をいつも「おいしい!」と表情豊かに喜ぶが、賢二も料理はできる。

埼玉県で1人暮らしをする美容師の賢二の母の家には、近所に住む姉2人がよく顔を出す。姉の1人は結婚して子供がいるが、1人は独身。両親は別居しており、賢二が記憶する父親は、ときどきお金を奪うために帰ってきては暴力をふるう人。長く生活保護を受けていたが、やがて亡くなる。