メーガン妃とヘンリー王子「王室離脱」は「大事件」になるのだろうか

「セレブリティ資本主義」がもたらすもの
池田 純一 プロフィール

欧州の中の島国イギリスではなく、七つの海を制する大英帝国の夢、再び。ドーバー海峡の向こうの大陸欧州=EUではなく、大西洋から、太平洋、インド洋をまたにかける地球規模のコモンウェルス。それらを金融と情報の複合体としてのネットワークを通じて制覇する。その旗振り役をハリー王子が担うことになる、といった壮大なシナリオだ。

実際、エリザベス女王もハリー王子の決断を、基本的には支持している。なにしろ、ハリー王子はイギリスではエリザベス女王に次ぐ人気者なのだから。彼が次の時代に挑戦する、といナラティブは、存外魅力的だ。

そして、そのようなナラティブにイギリス人が惹かれてしまう気分の根底にあるのは、海の国のイギリスに戻りたいという、ブレグジットの根っこにあるイギリス人の心性の反映なのだ。そう言ってもいいように思えてしまう。その意味では、確かに、一度、EUではなくUK(連合王国)に戻った上で、自らのナショナル・アイデンティティを見直す、ということなのだ。

 

北米=カナダを選んだ理由

そして、その点でも、ハリー王子が北米=カナダを選んだことは面白い。もちろん、北米が選ばれたのは、もともとメーガン妃がロサンゼルス生まれだから、ということからなのだが。

ちなみに、アメリカではなくカナダが選ばれたのは、ドナルド・トランプが大統領の間はアメリカに帰りたくない、というメーガン妃の意向を反映してのものらしい。

それでも、ハリー王子が次男であることが理由の一つになって、北米が選ばれたというナラティブを書くことも可能だし、そのほうが、もっともらしいのだ。

その昔、17世紀から18世紀にかけて、イギリスが北米大陸の植民地化を始めた頃、イギリスから北米大陸に渡ってきた人の中には、長男以外の貴族の子弟もいた。家督を継げない次男以下の貴族の子弟は、北米大陸に行けばなにかあると思っていた。もともと、貴族の家系の男子は、家督を継ぐはずの長男に何かあったときのバックアップ、すなわちプランBにすぎない。ハリー王子と、兄であるウィリアム王子との不仲が伝えられるのを耳にすると、ふとこんな考えもよぎってしまう。

そして、実際、その北米大陸で成功した次男坊たちが、今のイギリスを凌駕する国力をもつアメリカを具体的に作り出すことに貢献した。当然、富を独自に稼いだものもいる。長男以外の貴族の子弟にとって、今日のアメリカとカナダからなる「北米」とはそのような機会の土地であった。