メーガン妃とヘンリー王子「王室離脱」は「大事件」になるのだろうか

「セレブリティ資本主義」がもたらすもの
池田 純一 プロフィール

ただ、それでも、この「メーグジット」は、単純に21世紀の「情報社会化」された現代において、新しい王室のあり方を具体的に模索する良い機会になるようにも思えている。なによりタイミングがブレグジットと重なっているのが示唆的だ。イギリスがEUから離脱し、大陸欧州(Continental Europe)とのつながりをドライに見直そうとしている時に、王室の血を引くものが、イギリスと北米――さしあたってはカナダ――との間で二重生活を試みようとしているのだから。

これもまた先ほど触れた『ダウントン・アビー』をふり返れば、イギリスの貴族社会が、いかに「エステイト」と呼ばれる土地を中心にした資産、すなわち「家督」の継承に縛られたものであるかを思い出させる(詳細は映画『ダウントン・アビー』レヴュー:『〈ポスト2016〉の現代に向けた、100年前からの贈りもの』を参考にしてほしい)。そんな社会の象徴たる王室から、そのような(土地を中心にした)縛りから、あっさり解放してもらえたのだ。むしろ、その自由のメリットを考えることもできるように思えるのだ。

 

大英帝国に戻ろうとしている

加えて、ブレグジットの動きから見られるのは、そろそろイギリスにも、往時のイギリスに戻りたいという願望が生じているように思えることだ。EUからの離脱というイベントは、端的に、欧州大陸から大西洋に軸足を動かすことで、イギリスが再び大英帝国時代の、七つの海を征した自由の帝国に戻ろうとしているようにも見えるのだ。

だから、長い目で見れば、今回のメーグジットの試みも、EUからコモンウェルス(英連邦)へ、大陸から大洋へと、イギリスの視線が移ることの先駆けとなるのではないか。カナダが英連邦を構成する主要国の一つであることを考えれば、あながちおかしな話でもない。

注意すべきことは、ソーシャルメディアの普及した現代では、ものごとは本人たちの「意向」を超えて、周りの「期待」に巻き込まれる形で進むことだ。その意味では、「メーグジット」というイベントも、すでにハリー&メーガンの手を離れ、ソーシャルメディアの大洋に放たれてしまっている。

たとえば、王室の係累がカナダに拠点を移すなら、イギリス王室が、欧州大陸から大西洋に目を向けたことを意味する。そんな解釈を、大真面目に論じることも可能になる。

つまり、イギリスが、第2次大戦後、大戦の記憶や復興の必要性から、ことさらに強化を図っていた欧州大陸とのつながり、という磁場から抜け出し、それ以前に戻ろうとする。これもまた、21世紀的な地政学的変貌の一つであり、その象徴にハリー&メーガンが位置づけられるようなことも生じるのではないだろうか。

となると、二人の結婚式の際に、メーガンが纏ったウェディングドレスに、コモンウェルス加盟国/地域の刺繍がなされていたことも、単に懐かしいだけの話ではなく、その後のハリー&メーガンの行く末を象徴していたのだ……などというナラティブを練ることも可能なのだ。