大学生活を通して得られた財産は
かけがえのない友人

では、頑張って勉強して大学に進学してよかったなと思うことはあるかと聞くと、「そこでしか出会えない、かけがえのない友達ができたこと」と答えた。

「僕が大学に進んだのは、大学の4年間に、芸能界に入るきっかけを掴みたかったのが理由なんです。まさにモラトリアムですよね(笑)。そう言いつつ、一浪してるので親不孝なんですが。大学4年の時にデビューが決まって、『学校を辞めよう』って思った時、同じクラスで同じゼミで、サークルも同じだった友人が、『俺も手伝うから、卒業だけはしよう』と言ってくれた。その言葉を支えにして、もう1年かかって卒業することができたんです。そう言ってくれた彼には、感謝してもしきれません。あとは、学校での勉強が、直接的に役立つことはほとんどないけれど、物事をどう捉えるとか、どう咀嚼するとか、それを学ぶことにはつながりますよね」

俳優にとって、物事をどう捉えるかは、役をどう捉えるかということだ。その点において、藤木さんが、「自分の理系脳が邪魔だな」と思うことがあるという。

曖昧なことが苦手なんです。でもその“行間を読む”ということは、役者に一番必要とされることで。国語のテストって曖昧じゃないですか、作者の考えていることだって、『本当にそれしか答えがないの?』って、僕は疑ってしまう。でも数学は答えは一つだけれど、アプローチ方法は一つじゃない。公式は、答えにたどり着くための道具で、公式を知らない人でも答えを導き出せるところが面白い。国語のテストで、『これが答え』って言われても、『作者しかわかり得ない答えを、何でテスト作成者が代弁することができるんだ?』と腑に落ちない感じがあって、嫌なんです。俳優なんて、一番自分に向いていない仕事を選んだんだなと思ったりします(笑)」

その一方で、「明確な答えが見つからないからこそ、俳優を25年間も続けていられるのかもしれない」とも話す。

「どんな役を演じていても、『もうちょっと、違う方法があったのかもしれない』という後悔が残る。ただ舞台は、長いスパンの中でその後悔を活かして、違うことにトライできるところが新鮮です。だから飽きることなく続けられる」

20年以上、一つの仕事を続けてきた人間が、自分のやり方を疑うことは、本来ならばとても難しいことだ。でも彼は、いくつになっても、きちんと自分を疑い続ける。成熟を、豊さや奥行き、深みという言葉に置き換えるならば、彼は、常に自分の中に疑問を持ち続けることで、役柄の豊かさ、ひいては自分の中にある人としての奥行きや深みを、探り当てる。

撮影/岸本絢

KERA CROSS第二弾『グッドバイ』
昭和23年を舞台に、不埒な色男と怪力大食いの美女が巻き起こす恋愛狂騒劇。太宰治未完の原作をベースに、KERAが書き下ろしたコメディを、生瀬勝久が演出。出演は藤木直人、ソニン、真飛聖、朴璐美、小松和重、入野自由、生瀬勝久ほか。2月4日(火)〜16日(日)シアタークリエ https://www.keracross.com/goodbye0831