“疑うこと”は、理系としての性分
それが演じる原動力に

人が年齢を重ねる時、“成熟した”という言葉が濫用されるが、実際はどういうことなのだろうか。その具体的な答えが、彼の中にはあるような気がした。

デビューしたのは、まだ“イケメン”という言葉も生まれていなかった時代。90年代半ばのことだ。この浮き沈みの激しい世界で、彼は着実に俳優としての力をつけ、現在は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんが脚本を手がけ、生瀬勝久さんが演出する舞台『グッドバイ』で主演を務めている。今回は、その舞台にまつわるインタビュー。決して現状に満足しようとしない彼の発言の中には、人間が成熟するために必要な幾つものヒントがあった。

Inteview&Text/ YOKO KIKUCHI Photo/AYA KISHIMOTO

撮影/岸本絢
藤木直人 FUJIKI NAOHITO
1972年生まれ。千葉県出身。早稲田大学理工学部情報学科卒。在学中に東映映画『花より男子』花沢類役に抜擢され、95年デビュー。役者活動と並行して音楽活動を本格的に開始し、99年「世界の果て〜the end of the world」でCDデビュー。2006年、2007年は、2年連続で武道館単独ライヴを成功させた。2008年に初舞台。昨年で音楽活動20周年、今年で俳優活動25周年を迎える。

早稲田理工学部時代にデビュー

2月4日、全国公演の最終地、東京シアタークリエでの公演が初日を迎える、藤木さんが現在出演中の舞台『グッドバイ』は、KERAさんのこれまでの作品を、いろんな演出家が演出する「KERA CROSS」という企画の第2弾。今回、演出を担当する生瀬勝久さんは、2015年にKERAの作・演出で上演された本作を観ていたく気に入り、自ら、「これをやらせてほしい」と申し出、自らキャスティングにもこだわり、藤木さんをはじめとする今回のカンパニーを創ったそうだ。

『グッドバイ』のワンシーン。ソニンさんとも共演 撮影/引地信彦

1972年生まれの藤木さんは、現在47歳。よく俳優は、「役がこなければ無職と同じ」などと、自らの職業の不安定さをネタにするが、藤木さんは、トーク番組「おしゃれイズム」のパーソナリティを務め、1999年のCDデビュー以降、コンスタントに音楽活動も続けてもいる。それでも、こと俳優業に関しては、誰かが「この役を演じてほしい」と求めてくれない限りは、仕事にありつけない。受け身の仕事なのである。