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元経済ヤクザが解説「米イラン危機・流血の経済効果」

「暴力外交」がマネーを生む
アメリカによるイラン人司令官暗殺は戦争への挑発ではなく、「穏やかに話す」テーブルへの招待と私は導き出した。見えてきたのは、「暴力外交」がアメリカに“一石多鳥”の利益をもたらす構造だった。「元経済ヤクザが指摘『株式相場の支配者・AIの弱点』」において、私は「マネーがドルと暴力の関係によって生み出される」ことを「M=$V」と定義した。この「マネーの行動式」の典型的なモデルこそ、今回の米イラン危機だ。覇権国の思惑を読み取ることこそ、明日の「富」を生み出す鍵だ。元経済ヤクザの私が「最小限の暗殺」が「最大限の経済効果を生み出す」世界の在り方を解説しよう。

「暴力を携え、穏やかに話す」

今年1月3日、アメリカはイラン革命防衛隊のゴドス部隊司令官、ガーセム・スレイマニ氏(62)を暗殺した。

直後に、革命防衛隊の最高司令官権限を持つ最高指導者のアリー・ハーメネイー氏(80)が、3日間の服喪とともにアメリカへの報復を宣言。4日には、アメリカ大統領、ドナルド・トランプ氏(73)が、「イランが米国人や米国の資産を攻撃すれば、イランの52カ所を標的にする」と警告した。

だが8日、イランはイラクにある米軍基地を弾道ミサイルで攻撃。しかし同日、トランプ氏がホワイトハウスで演説を行い、攻撃によって米国人やイラク人の死者は出ておらず、イランが「身を引いているようだ」と述べ、戦争回避の姿勢を示した。

Twitterでは「#WWIII 」(第三次世界大戦)というタグが世界のトレンド1位なるほどの国家間の「緊張」が、わずか600時間で「デタント」(緩和)した理由とは――今回はこれを解き明かしていこうと思う。

第26代アメリカ大統領、セオドア・ルーズベルトは「棍棒を携え、穏やかに話す」(speak softly and carry a big stick)をスローガンとする「棍棒外交」を行った。

だがルーズベルト時代になくて現在あるのが、世界最強となった「米軍」だ。「対話」を中心としたオバマ時代の外交に対し、トランプ氏の外交政策は「暴力外交」と呼ぶ方が適っていると言えるだろう。「最強の暴力を携え、穏やかに話す」(speak softly and carry the strongest violence)のがトランプ流ということだ。

意外に思うかも知れないが、トランプ氏は「穏やかに話す」ことを望んで、「暴力」を携えたのではないかと、私は考えている。

 

アメリカ・イラン危機への道程

この2年の間にアメリカとイランの間に起こった出来事の要点を整理しよう。

18年5月、アメリカは6カ国による「イラン核合意」を離脱、トランプ大統領がイランに対する「最高水準の経済制裁」を明言する。

19年5月には当時大統領補佐官で国家安全保障担当だった、ジョン・ボルトン氏が、イランによる「いくつかの不穏なエスカレートの兆候」への「明確なメッセージ」として、空母打撃群と爆撃部隊という「強大な暴力」を中東に派遣する。

直後には、イラン大統領が「核合意」の一部停止と、核開発の再開の可能性を発表。6月にはイラン革命防衛隊がタンカーを攻撃するなど、両国の緊張関係は高まっていった。

転機となったのは、19年9月10日のボルトン氏解任だ。リベラル系メディアでは、この解任劇は「賢明」とされたが、これほどの「悪手」はないと私は考えている。むしろこの解任が「暗殺」に繋がったとしか思えないからだ。

解任以降の出来事を整理したい。