武漢肺炎「元凶は中国がカナダから盗んだコロナウイルス」説を追う

実験施設からの流出か
北村 豊 プロフィール

コロナウイルスと武漢をつなぐ線

さて、ここで登場するのはカナダ在住のウイルス学者で中国国籍の邱香果である。中国で1964年に生れた邱香果は現在55歳である。学業成績が極めて優秀であった邱香果は1980年に飛び級により16歳で河北医科大学に入学した。1985年に河北医科大学を卒業して医学学士となった彼女は、天津医科大学の大学院へ進み、1990年に同大学院の免疫学修士号を取得した。

邱香果

1996年に訪問学者として米国へ留学した邱香果は、テキサス州ヒューストンにあるテキサス大学附属MDアンダーソンがんセンターで研究に従事したが、その翌年の1997年にはカナダのマニトバ州へ移動し、マニトバがん治療センターの研究助士になった。

その後、彼女はカナダの国立微生物研究所(National Microbiology Laboratory<略称:NML>)で特殊病原体計画のワクチン開発と抗ウイルス治療部門の責任者になり、これと同時期にマニトバ大学医学・微生物学部の教授を兼任することになった。

 

こうしてウイルス学者として20年程をNMLで過ごした邱香果は、2018年にNMLの同僚であるゲイリー・コビンジャー(Dr. Gary Kobinger)と共同でエボラ出血熱の治療薬であるZMappを開発し、カナダ総督技術革新賞(GGIA)を受賞した。こうした輝かしい経歴を持つ邱香果はウイルス学者としては世界的に名を知られた存在であるということができる。

ところで、2020年1月末時点では、バイオセーフティレベル4(BSL-4: biosafety level-4)の生物安全実験室は世界24ヵ国・地域に59ヵ所以上が存在しているというが、中国には上述した武漢NBLと中国農業科学院ハルビン獣医研究所の2カ所がある。

BSL-4実験室の運用開始時期は、前者が2018年1月であるのに対して、後者は2018年8月となっている。ちなみに、日本には国立感染症研究所(東京都武蔵村山市)、理化学研究所筑波研究所(茨城県つくば市)の2カ所があり、3カ所目の長崎大学感染症共同研究拠点(長崎県長崎市)は建設中で2021年7月末の竣工予定となっている。

邱香果が所属するNMLは、マニトバ州ウィニペグ市に所在するカナダで唯一のBSL-4の生物安全実験室で、世界的にも知られた権威ある研究所であり、エボラウイルスやエイズウイルス、炭疽菌などを含む人類や動物にとって極めて致命的はウイルスを保管・研究している。

コロナウイルスについても世界的な研究センターである。2012年6月にサウジアラビアの男性(60歳)が発熱、咳(せき)、痰(たん)、呼吸が荒くなるなどの症状を示して、ジェッダ市内の医院で診察を受けた。同医院では病気を特定できなかったが、エジプトのウイルス学者であるアリ・モハメッド・ザキ(Ali Mohamed Zaki)が患者の肺から摘出したサンプルを検査した結果、今まで見たことのないコロナウイルスであることが判明した。

ザキ氏はこのウイルスをオランダのエラスムス大学医学部付属医療センターのウイルス学者であるロン・フーチェ(Ron Fouchier)に提供して見解を求めたが、フーチェ氏は当該ウイルスをカナダのNMLに回して分析を依頼した。これはNMLが長年にわたってコロナウイルスの検査サービスを展開していたからであった。