鹿児島の川内原発〔PHOTO〕Gettyimages

原発を「動かした裁判官」「停めた裁判官」そのキャリアの大きな違い

エリートと「現場主義」

裁判官の世界ではどんな人物が「出世」するのか。原発再稼働をめぐる裁判で、原発を「動かした裁判官」と「停めた裁判官」のキャリアをつぶさに見ると、その傾向が見えてくる。裁判官たちの素顔に迫った『裁判官も人である 良心と組織の狭間で』を上梓したジャーナリストの岩瀬達哉氏による寄稿。

裁判実務一筋

興味がそそられるのは、原発を停めた裁判長と、原発の再稼働を認めた裁判長では、その経歴において際立った違いがあることだ。

原発の安全性や電力会社の技術的能力などを厳しくチェックする裁判長は、地方裁判所などで各種各様の裁判をこなしてきた人が多いのに対し、最高裁事務総局に勤務経験のあるエリートと称される裁判長は、原発の安全性は行政庁によって保障されているとの前提のもと、再稼働を容認する傾向にある。

ちなみに原発訴訟の特徴は、原発の立地県の住民だけでなく、事故が起こった際にその影響を受ける他府県の住民もまた、行政区域を越えて運転差し止め訴訟を起こせるところにある。

たとえば、高浜原発について言えば、事故が起これば琵琶湖が汚染され、滋賀県民が被害を受ける。そのため、福井県高浜町から65キロ離れた大津地裁にも、高浜原発に対し、運転差し止めを求める仮処分申請が持ち込まれた。

高浜原発〔PHOTO〕Gettyimages
 

これを審理した大津地裁の山本善彦裁判長(40期、当時61歳)は、大阪地裁を振り出しに横浜、神戸、鹿児島などの地裁で裁判実務一筋に歩んできた。「おとなしく、目立たないが、記録をよく読み、よく考え、事実を見る目は確かな人」と言われている。その山本裁判長は、2016年3月9日、高浜原発の再稼働禁止を言い渡した。