Official髭男dismの新曲「I LOVE...」を親密性から読み解く

「イレギュラー」な愛が織りなす星座たち
阿部 幸大 プロフィール

完全には分かち合えなくても

最後に考えなくてはならないのは、MVに現れるもうひとつのグループ、すなわちOfficial髭男dismの役割である。

MVで彼らが演奏する部屋を観察すると、天体望遠鏡、地球儀、太陽系らしきポスターなどが目につく。歌詞にも「銀河」という語彙が登場するし、この部屋は曲をつうじて朝から夜になってゆくのだが、最終的には壁が消滅して夜空に輝く星々のようなライトが背後に現れるなど、宇宙はこの曲のひとつのモチーフとなっている。

「I LOVE...」公式MVより

「真ん中」で「不思議な引力」を発揮する「君」、という冒頭の歌詞はまわりを惑星が公転する太陽のイメージと共鳴するし、太陽と交わらない惑星の諸軌道は、すでにみた「You」に届かない「I Love」というテーマと呼応している。MVがぐるぐる廻っているのもそのためだろう。

だが、宇宙というモチーフが選択された真の理由は、明言されないが、この作品のテーマを統合する絶好の要素を導入するためであるに違いない。

それは星座である。

「I Love」が織りなす親密圏、それは複数の点を複雑にむすんで現れる星座という幻に、あまりにも似ているではないか。

こうした文脈を踏まえれば、星々の出現と同期して歌われる「独りじゃ何ひとつ/気付けなかっただろう/こんなに大切なに」というすでに見た歌詞や、「見えない物を見て笑う君の事を/分かれない僕が居る」というフレーズも、違って聞こえてくるだろう。

「君」には「Your Love」の対象たる星座が見えているに違いないのだが、それを「完全に分かち合う」ことはできない。しかし「大切な光」に気づかせてくれることもまた確かなのであり、見えない目的語に向けられた「僕」の「I Love」もまた誰かに――たとえばわたしたちに――リンクしてゆくはずだ。

MVの6組はたがいに作用しあって、ひとつの親密圏をなすのだと示唆した。いまや、髭男がこの「I LOVE...」という親密性の星座を完成させる第7の星であることは明白だろう。彼らは、掃除用具やポスター、あるいは女性4人組というジェンダー的鏡像を介して、ほかの6組をゆるやかに統合している。

愛すべき1つの星=Youに出逢うことは、ひとつの奇跡であるだろう。だが、男女愛や家族愛といった規範にイレギュラー扱いされる人びとにだけ見える奇跡もまた存在する。「I LOVE...」は、歌詞、音楽、映像という3要素を絶妙に配置することで、イレギュラーな星座を垣間見せる。それを丁寧に見つめるリスナーは、すでにその一角を担いつつあるのだ。