Official髭男dismの新曲「I LOVE...」を親密性から読み解く

「イレギュラー」な愛が織りなす星座たち
阿部 幸大 プロフィール

6つの「愛」の関係性を読む

「I LOVE...」のMVは、歌詞にくらべるとストレートにメッセージを打ち出している。「読み解く」必要があった「Pretender」とは違って、今回はMVを観れば、いくつかのポイントは一目瞭然だ。音楽と関連させつつ確認してゆこう。

まずは基本的なつくりを整理しよう。今回のMVでは、狭めの一室で演奏する髭男メンバーの映像のほかに、それぞれ独立した6つのグループの群像劇が、縦方向に回転するようなワイプで、およそ1小節の間隔で入れ替わる。この構造は「Pretender」に類似しているが、映像監督はどちらも新保拓人がつとめている。

その6グループの内訳は、4人の若い女性、老夫婦らしき男性画家と女性、若い妊婦(→母親と赤ん坊)、そして、父と娘、老いた男性と犬、若いレズビアンのカップル、となっている。すべてこのような関係だと断定はできないものの、ひとまずこう理解しておこう。

「I LOVE...」という曲のテーマはもちろんであるが、すでにわかるように、この曲のMVは、年齢、性別、さらには種差にもかかわらず、いくらでも多様な、そう、イレギュラーな愛があってよい、というメッセージを発している。

上述の6組は列挙した順番に現れるのだが、MVを見ると、「愛」が徐々に「イレギュラー」化してゆくよう計算されていることがわかる。序盤は人びとの何気ないポートレートに見えるが、2番に入って、父子家庭、男性と犬、レズビアンという1番に現れない3組が出てくることで、「レギュラー」な家族からの逸脱というテーマが前景化するのだ。

残念ながら「料理をする父親」は父子家庭を認定する材料として機能する。(「I LOVE...」公式MVより)
手間にある空席の椅子は男性がパートナーを亡くしたことを暗示している。(「I LOVE...」公式MVより)

この箇所は音楽も重要である。2番のメロのアレンジは1番と異なっており、静かなピアノ・ブレイクからゴスペル風の合唱へと展開するのだが、映像では、この劇的な展開に同期するように「イレギュラー」な3組をつぎつぎと見せてゆく演出になっている。

ここでメンバーが不自然を厭わずに演奏を犠牲にしてハンドクラップに参加する様子は、このイレギュラーな親密性を讃える拍手に参加するようリスナーを促しているかのようだ。

「I LOVE...」公式MVより

今回の群像劇で重要なのは、1つのグループだけ見てもなにも感じられないが、6組を並べてはじめて「ふつうの家族からのズレ」という主題が見えてくることである。個々の要素ではなく、すこし離れて関係性の「圏」を観察しなければ見えないもの、それが「I LOVE...」を読み解くカギであるようだ。