日米英を渡り歩いた企業研究者が教える英語習得「とっておきの方法」

映画のディクテーションで生の英語を!
鎌谷 朝之 プロフィール

たとえばディクテーションの教材としてアメリカ映画を選ぶとするなら、どの映画を「ディクテーション」するかはあなたがどの映画が「20回見られるくらい好き!」と言い切れるかにかかっている。好きでもない映画を20回も見ようとすれば絶対に挫折する。だからあなたが一番好きな映画を選んでほしい。できれば「解答」となる英語字幕のあるDVDやブルーレイディスクで選んでいただくとよいだろう。

僕がアメリカ留学時代、現地の英語をマスターするバイブルとした映画はクエンティン・タランティーノ監督の出世作『パルプ・フィクション』だ。

【写真】パルプ・フィクションのポスターとタランティーノ監督
  『パルプ・フィクション』(1994)のポスターと並ぶクエンティン・タランティーノ監督 photo by gettyimages

全編不適切な俗語と暴力に満ちた問題作だが、僕は大学院留学1年目に映画館でこの作品を初めて見た時に一語たりとも聞き取れなかったことにショックを受け、ビデオを買って2年かけて20回以上鑑賞した。これによってアメリカ人の同級生たちがしゃべっている他愛のない会話や授業でのディベートがようやく聞き取れるようになったのである。

英国映画のディクテーションでクィーンズイングリッシュをマスター!

英語圏ながらアメリカとあらゆるところで異なる国・イギリスを理解するためにぜひ活用したいのが「イギリス映画のディクテーション」だ。ただ「日本でよく知られているイギリス映画」というと『007』に代表されるスパイ物や『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』のようなラブコメくらいかもしれない。

これらのジャンルで勉強するのも悪くはないのだが、どちらのジャンルもお話の設定が庶民の生活とはかけ離れていて、ディクテーションの教材としてはあまり適切でないかもしれない。

そこで僕がイギリス人と渡り合う教材として強力に推す作品をここに2つ紹介したい。1つ目が『ホット・ファズ――俺たちスーパーポリスメン!』、もう1つは『カレンダー・ガールズ』である。

前者はアメリカのアクション映画をこよなく愛するキャスト、スタッフたちが作り上げたイギリス版「バディ・ムービー」だ。

  『ホット・ファズ――俺たちスーパーポリスメン!』(2007)のエドガー・ライト監督(左)、脚本・主演のサイモン・ペグ(中)、準主役で出演のニックフロスト photo by gettyimages

アメリカのバディ・ムービーといえば2人の異なる個性を持った男たち(だいたいが警察官もしくは刑事)が反発しあいながらも最終的には事件の真相に迫り、銃撃戦やカーチェイスなど派手なアクションを経て犯人を逮捕するという筋書きで進むドラマであり、『ホット・ファズ』もその流れを百パーセント踏襲している。

しかしこの映画は主人公のキャラクター造形、黒幕の設定、最後のアクションいずれをとってもアメリカ映画ではあり得ない黒い笑いに満ちた内容となっており、イギリスでの公開時に大ヒットを記録した。

国が違えば笑いのツボも異なるといわれているが、この作品はその最たるものであり、(日本でもよく知られている)モンティ・パイソンによる一連のコントに始まるイギリス流のブラック・ユーモアの系譜に連なる傑作だと思う。

アクションやブラックコメディが苦手な方に勧めたいのが『カレンダー・ガールズ』だ。

【写真】N・コール監督とヘレン・ミレンらカレンダーガールたち
  『カレンダー・ガール』の監督ナイジェル・コール(中央)を囲む、ヘレン・ミレン(監督の右)ら"カレンダー・ガールズ" photo by gettyimages

こちらは、イギリスの片田舎に住むオバサマたちが近所の病院のソファーの座り心地の悪さに不満を持ち、寄付金を募って新しいものに買い替えるべく文字通り「一肌脱ぐ」という心温まる実話を映画にしたものだ。イギリスの地方都市ならどこにでも必ずいそうな個性溢れるご婦人たちが次々登場し、夫や息子などの男衆をタジタジにさせるバイタリティーが痛快。特に女性の皆さんにお勧めしたい作品である。

どちらを選んでいただいても結構。大切なことは1つの作品を10回以上鑑賞し、台詞を一語残らず頭に叩き込むことである。私はこのやり方で生の英語をマスターした。騙されたと思ってぜひ試して欲しい。

ちなみに、気さくで直截的な表現を好むアメリカ人にとってイギリス英語(クィーンズイングリッシュ)は高尚に聞こえるために潜在的なコンプレックスがある。このため、高飛車に議論を吹っ掛けるアメリカ人にイギリス英語で切り返すといい感じに委縮してくれ、話を聞いてくれるようになることが多い、ということをこっそり(笑)申し添えておこう。

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