日米英を渡り歩いた企業研究者が教える英語習得「とっておきの方法」

映画のディクテーションで生の英語を!
鎌谷 朝之 プロフィール

ディクテーションで英語を鍛え直す

発表は事前に準備できるが、研究室での議論となるとそうはいかない。基本的にぶっつけ本番。こうした生の英語を聞き取るのは一苦労だ。

僕はカリフォルニア大学アーバイン校大学院化学科に在籍し、有機合成化学の世界的権威であるラリー・E・オーヴァーマン先生の下で研究を行った。研究分野やレベルとしては日本の研究室と大きく違ったわけではない。しかし、実際に勉強・研究を始めてみて初めて、僕の英語力が同級生と比べて致命的に劣ることに気がついた。

僕は中学・高校時代から英語が得意科目で、リスニングを含めた英会話スキルも頑張って習得し、大学時代にも外国からの研究者の講演会を聴講するなどして研鑽に励んでいたつもりだった。しかし残念なことに、それでは到底不充分だったのである。

なかでもディベートの時間は拷問だった。講義やプレゼンテーションの場ではゆっくり、丁寧に説明するアメリカ人もひとたびディベートモードに入るとマシンガントークが炸裂、喋るスピードが何倍も速くなる(少なくとも僕にはそれくらい速く聞こえる)。

普段おとなしくしている女の子が目を吊り上げて猛スピードで反論する様子を間近で見た僕は驚愕のあまりその場で一言も発することができなかった。そもそも一語たりとも聞き取ることができないのだ。これでは対抗どころか、議論の輪に加わることすらできない。

【写真】おとなしい女の子も猛スピード・トーク
  普段おとなしい女の子が猛スピードで反論する様子を見て、驚愕のあまり一言も発することができなかった…… photo by gettyimages

頭にきた僕は一念発起、こいつらに負けてなるものかと英語の勉強をやり直すことにした。そのためにやったのがアメリカ映画を「ディクテーション」するという手法である。

「ディクテーション」とは同じ内容を繰り返し聞いて書き出す、いわゆる「テープ起こし」の形による勉強法だ。ネットなどで調べていただければわかるが、この方法を使えば誰でもどんな言葉でも聞き取り、喋ることができるようになる。

問題はこの勉強法が「拷問」に近い苦行であることだ。どんな美味しい料理でも毎日食べさせられたらさすがに飽きるが、それは英語の教材も同じ。ディクテーションではそれを我慢して一語一句聞き取れるようになるまで聞き取りを徹底的に強制する勉強法だ。

試しに数秒の英会話をディクテーションしていただくとわかるが、どんなにマシンガンのようなスピードで話される言葉でも20回も聞けばほぼ全部の単語が聞き取れるようになるばかりか、英語独特の言い回しを含めたすべてのフレーズが脳内に刷り込まれ、頭から離れなくなり、自分でも正しく発音することができるようになる。

同じ理屈で、映画1本を20回鑑賞すればどの単語も聞き取れ、多くの表現が体に刷り込まれるという発想だ。

【写真】
  映画1本を20回も鑑賞すれば、多くの単語や表現が体に刷り込まれるだろう photo by gettyimages

この勉強ができるかどうかがあなたの語学力を決めると言って過言ではない。逆に言えば、ディクテーションによる勉強を拒否する人に英語を含めた外国語をマスターすることは絶対にできないと言い切れる。それくらい効果てきめんな勉強法である。

では、ディクテーションの教材として映画を選ぶなら、どのような映画を選ぶべきだろうか?