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# 財政赤字 # アメリカ

知らないと損する、世界の投資家が「米国債を購入」するワケ

米国の財政赤字をどう見るか

日経新聞は財務省の広報誌

1月19日の日本経済新聞朝刊に、米政府の財政拡張に関する記事が掲載された。財政赤字額は年1兆ドル(約110兆円)を超え、世界を見ても断トツの数字だ。

債務残高は国内総生産(GDP)の約100%と第2次世界大戦の直後以来の水準となり、利払いは年43兆円に膨らんでいる。日経としては、このまま債務が増え続けるのは危険だという論調を貫きたいようだ。

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このような財政緊縮路線の記事ばかりを書いているので、日経新聞は財務省の広報誌、御用新聞と呼ばれるのだ。米政府の数字をどう捉えるのが正しいのか、改めて見ていこう。

 

米国の金利は1%以上と高く、そのため世界からマネーが集まり、米国の財政赤字を賄っている。目先の金利で投資家を釣り、財政リスクに目をつぶっているというのが日経新聞の解説だ。

米国債の名目金利1%以上を高いと見るのは、あくまで日本やドイツなど例外的な国と比較した場合だ。米国より名目金利の高い国は数多くあり、そうした国の投資家も米国債を購入している。

海外投資家は名目金利のみを理由に投資していない。米国は世界の多くの国に対し経常赤字になっている。つまり多くの国は対米ドル債権を有しているわけだが、その債権の代わりに米国債を購入している。

その際には、為替など他の経済的なファクターも当然考慮されている。金融機関の担当者取材を鵜呑みにして記事を書いていると、こうした誤解が出てくる。

そもそも、政府にしろ民間にしろ、債務残高だけで経済の健全性を語るのは誤っている。企業の財務状況を見るとき、債務残高ではなくバランスシートで資産と負債の両方を見るのはファイナンスの基本中の基本だ。

どんな企業でも負債はあるが、それがどのように活用されているかは資産を見ればわかる。ただ実態がよくわからない部分も多い国の財政に関し、財務省は「由らしむべし、知らしむべからず」のスタンスを貫く。

民間企業の場合、財務状況は企業単体ではなく、グループ企業全体の連結ベースで見る必要がある。国も同様で、国の「子会社」である中央銀行を含めた「統合政府」で見なければいけない。

 

米国政府を統合政府で見ると、ネット債務残高はGDP比の1割にも満たない程度だ。この数字は英仏独より低く、債務残高で言うのならばこれらの諸国よりよほど健全性が高い。

このように米国政府の健全性は、市場で取り引きされるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートを見てもわかる。簡単に言うと、各国国債が破綻した時に保証される保険(料)であり、財政状況を客観的に表すものだ。そして、米国債のCDSレートは0・15%と、先進国でもトップクラスで低い水準である。

市場のプロは、米国政府の破綻などまったく現実味のない話と見ている。それにもかかわらず、米国政府の財政危機を煽って、誰も耳を貸すはずがない。地政学リスクや上がり続けるダウ平均株価に疑念を持つ人もいるかもしれないが、雰囲気だけで語るのは危うい。きちんとした数量的なエビデンスがあるものを信じたほうがいい。

『週刊現代』2020年2月1・8日号より

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