中国が世界の「覇権国家」にはなれそうもない単純な理由

「寛容」こそが最強国の条件だ
野口 悠紀雄 プロフィール

中国の「内なる寛容性」

では中国はどうか?

チュアは、中国は長い歴史において、「寛容政策をとり、それが成功した」と指摘する。ゴビ砂漠から南シナ海にいたる地域に住む数億という様々な人種集団を、漢民族という概念で統一したのであり、それは、古代ローマがさまざまな人種集団を融合したのと同じだという。

広東人、上海人、湖南人は、体格も言語も風習も異なっているから、別の人種と考えるべきだが、それらを、中華思想、儒教と道教、科挙制度、天子思想などからなる中国文明によって同化したというのだ。

 

EUは、4.5億の人口に対しての同化政策をいま進めようとしている。しかし、中国は14億人近い人口の同化を、歴史のずっと早い時点において実現していた。

だが、中国の寛容性は、「内なる寛容性」だとチュアは言う。

中国は外国からの移民を認めてこれを中国の国民とすることはしなかった。これがアメリカとの大きな違いだ。

現在においてもそうだ。その意味において、中国が覇権国になることはないだろうと、チュアは断言している。

ただし、中国が経済的に大きくなり、アメリカと対抗するようになるだろうと予測する。また、中国の軍事力がアメリカと並ぶか、これを凌駕する可能性もあると言う。

それは、アメリカの「一極優位」の時代が終わり、米中という2つの大国が対立する世界だ。

これが現実に生じつつある。つまり、歴史の動きの基本構造は、アメリカによって引き継がれた「ローマ的寛容」と、外に向かっての中国の「非寛容」との対立だ。

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