中国が世界の「覇権国家」にはなれそうもない単純な理由

「寛容」こそが最強国の条件だ
野口 悠紀雄 プロフィール

アメリカはローマの後継者か

ローマの伝統を受け継いだ国がアメリカ合衆国だ。

アメリカの制度がローマと似ていることは、しばしば指摘される。それは、アメリカ建国の父たちが、古代ローマを意識して新しい国を設計したからだ。

ハンナ・アーレントは、『革命について』(ちくま学芸文庫、1995年)で、アメリカ独立(アーレントの言葉によれば「アメリカ革命」)は、ローマを再現しようとする動きであったとし、「アメリカ建国時のフェデラリストたちは、独立当初から、ローマ的な共和制を意識していた」と指摘する。

 

さらに、つぎのように言う。

「アメリカ革命の人々の活動は、異常なほど古代ローマの先例によって鼓舞され、導かれた」
「マキャヴェリの場合と同じく、彼ら(アメリカ建国の父たち)にとっても、偉大なモデルと先例はローマの共和政であり、その歴史の偉大さであった」
「彼らが自分たちのことを創設者だと考えたのは、彼らがローマの例を真似し、ローマ精神を模倣しようと意識的に努力したからである」
「アメリカは、ビザンティンから欧州という潮流の外にあり、国家と法の権威を宗教に求めることはない。アメリカは古代ローマをモデルとして建国され、その理念は現実的で保守的である」
「アメリカ人が憲法に自らを結びつけた力は、啓示された神に対するキリスト教的信仰でもなければ、同じように宇宙の立法者である創造者へのヘブライ的服従でもなかった。革命と憲法に対する彼らの態度が幾分でも宗教的と呼べるとすれば、『宗教』という言葉を、そのオリジナルなローマ的意味で理解しなければならない」

アーレントがいう「ローマ的意味の宗教」とは、常に先祖の起源に回帰しようとする古代ローマの人々の精神を指す。したがって彼らは「建国の精神」が後継者の絶えざる流れの中で受継がれてゆくことが、国家と法に権威をもたらすと考えたのだ。

アメリカ連邦議会上院の議員は、ローマ元老院senatusと同じセネトsenateという名で呼ばれる(日本語訳では、ローマの場合は「元老院」、アメリカの場合は「上院」と、別の言葉になっているので気づきにくい)。

アメリカの国会議事堂の建築様式は「新古典主義」として知られるもので、古代ローマの復活を夢見たものだ。

その議事堂が建つのは、ワシントンのキャピトル・ヒル。これは、「カピトリーノの丘」の英語形である。この丘は、ローマの7丘で最も高い丘で、ローマの中心地。ローマの最高神であったユピテルやユノーの神殿があった。

アメリカの国章は鷲である(ハクトウワシが翼を広げ、13枚の葉のついたオリーブの枝と13本の矢とを左右の足に握る)。ローマ帝国の国章も鷲だった。

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