中国が世界の「覇権国家」にはなれそうもない単純な理由

「寛容」こそが最強国の条件だ
野口 悠紀雄 プロフィール

偏狭さが国家を滅ぼす

ギボンは、さらに、つぎのように指摘している。

「属州化は軍事的に勝ち取ったものだから、反抗が生じる可能性はつねにあった。そこで、ローマに従属することに強いインセンティブを与える必要があった。このためにカエサルが行った重要な改革は、ローマ市民権をイタリア人以外にも与えたことである」

 

グレン・ハバードとティム・ケインは、『なぜ大国が衰退するのか』(日本経済新聞出版社、2014年)でつぎのように言う。

「征服した異民族にもローマ市民権を与えるというポピュリズム的な市民権拡大策によって、ローマは救われた。属州のヒスパニアの人々に市民権を与えたことで、カエサルはその後数百年にわたってローマ社会を強化した制度的原則を確立した」

ローマ帝国の長い歴史の間には、属国の出身者が皇帝になるといったことが生じた。1世紀末から2世紀後期はローマ帝国の黄金時代だとされ、その時代の皇帝は「5賢帝」と呼ばれている。中でも トラヤヌス、ハドリアヌス、アントヌス・ピウスの3皇帝は別格の皇帝と考えられているのだが、彼らはヒスパニアやガリアの出身だ。

なお、寛容政策は、カエサルが始めたことでなく、ローマの伝統だった。

チュアによれば、ローマ人は、寛容の美徳を古代ギリシャを反面教師とすることで学んだ。ギリシャでは、スパルタとアテネがそうであったように、偏狭さと人種差別が憎悪の連鎖を生み出し、ついに戦争になってどちらも没落するということが、しばしば起きていたのだ。

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