軽井沢のひとつの集落のように
森やカルチャーを守るリゾート

もう少しだけ、大切な軽井沢の歴史を語らせてください。今の軽井沢がある礎には、かつて軽井沢を訪れこの町に深く魅了されたという外国人、アレキサンダー・クロフト・ショーの存在があります。1886年に、カナダ人宣教師であったショーが、友人らと軽井沢を訪れた際、故郷のカナダを彷彿とさせる気候や風景を大いに気に入ったというのも納得です。

本館2階に位置する贅沢なライブラリーラウンジ。コーヒーやハーブティーなどが用意され自由に寛ぐラウンジとして。吹き抜けの階下にメインダイニング「日本料理 嘉助」を見下ろせる。

そしてショーは、2年後の1888年になると、軽井沢初となる別荘を旧軽井沢の大塚山に建て、これをきっかけに軽井沢は避暑地として注目されたばかりか、軽井沢に未来の発展を想わせる新しい風が吹き始めたのだと伝えられています。

そして、星野リゾートはというと、企業としての社会的責任(CSR)の一端として、“始まりの時”からすでに故郷の自然を守り、訪れる観光客と貴重な大自然を共有したいと望む姿勢は変わらなかったと聞いています。

こうして時が流れ、星野リゾートの現代表となった当時の若きリーダー、星野佳路氏は、この軽井沢に再び新風を吹き込みました。

軽井沢はかつてショーの口コミのお蔭で西洋建築の瀟洒な高級別荘が建てられ、日本を代表する保養地となりました。その美しい軽井沢の自然を守りながら、環境に優しい高級旅館を造ることで、今度は、星野リゾートがこの日本旅館から世界に向けて、日本の素晴らしい宿をグローバルに発信する機会を作りました。

かつてショーをはじめとする外国人宣教師たちがキリスト教的精神で軽井沢を守ったように、今、「星のや軽井沢」は、「ピッキオ」の活動も含め、「国設の森」を守る番人のような存在となりました。旅館として人々を大いに楽しませ、温泉で癒やし、現代版“谷の集落”を満喫できるリゾート造りを成功させたのです。

ピッキオとはイタリア語でキツツキを意味。森と森に生きる動植物を未来に残そうと軽井沢星野エリアで様々な環境活動やネイチャーウォッチングを実施する「エコツーリズム専門家集団」。

例えば世界有数の観光国スイスが、どこを切り取ってもゴミひとつない箱庭のように美しいと言われる理由は、国を挙げて人々が何世代にもわたり壮絶な努力を重ねてきたからなのですが、かつてスイスに暮らした私は、それを毎日肌で感じていました。

同様に、町の自然環境や日常の道徳観念を保ち、維持し続けるのは口で言うほど容易なことではありません。軽井沢は、住人の皆様をはじめ、多くの関係者の日々の努力があってこその美しい避暑地であり続けているのです。

早いもので、「星のや軽井沢」は、すでに開業15年目に突入しています。敷地内の棚田も、木々も、この年月を経た今、軽井沢の原風景に少しずつ近づいているのではないかと思うほど、ランドスケープに大きな成長や変化を見ることができます。滔々と湧く温泉も、気の遠くなるような長い時代を経た今もなお、豊かな湯量は昔と変わらず、訪れる人々を癒やし続けているのです。

星のや軽井沢
長野県軽井沢町星野
☎0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/karuizawa/

部屋数:77室(庭路地の部屋、山路地の部屋、水波の部屋)
施設:メインダイニング「日本料理 嘉助」、ライブラリーラウンジ、ショップ、キッズルーム、宴会場、温泉施設、スパ ほか
アクセス:車/上信越自動車道碓氷・軽井沢ICから約20分、小諸ICから約25分 電車/JR軽井沢駅からタクシー約15分 ※駅南口から無料シャトルバス有


参考資料:『軽井沢避暑地100年』(中島松樹編・国書刊行会)、「軽井沢の歴史」(軽井沢観光協会

Text:Kyoko Sekine  Photo:Mikiro Tamai Composition:Aiko Hayashi