ジャーナリストの河合蘭さんによる連載「出生前診断と母たち」。本連載は、日本における出生前診断の現状を伝えている。そこには様々な親や医療従事者たちの思いがあるが、出産に関して決断するのは当人たちだ。出生前診断でダウン症の確率が高くても何もせず、そのまま出産することを選んだ人もいる。出生前診断そのものを受けずに出産した人もいる。そして、ダウン症だということがはっきりわかって、産まない決断をした人もいる。大切なのは、親たちが誰かに指示されずに「自分で決断できるか」ということだ。

技術は日々進化している。現在普通の健診ではわからないことも、もっと見えてくるかもしれない。もはや「出生前診断」はひとり一人が向き合う必要があるのだ。そんな今、10代の「未来の親」たちにむけた取り組みを、河合さんがリポートする。

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青山学院高等部の3年生が授業に挑む

ここは東京都渋谷区の青山学院高等学部の生物室。予鈴のチャイムが響くとまもなく、高校3年の女子学生、男子学生たち20名ほどが入ってきた。これから、ここでとても珍しい授業がおこなわれる。ゲスト講師として長崎大学医学部保健学科遺伝教育プロジェクトのメンバーがやって来て、出生前診断を扱う出前講座「プレママ・プレパパ教室」を開催するのだ。

生徒たちに挨拶する長崎大学遺伝教育プロジェクトチーム。左から森藤香奈子さん、佐々木規子さん、松本正さん、佐藤信二さん 撮影/河合蘭

講師たちは、遺伝カウンセリングや治療に当たっている現役の医療職だ。日本では多くの人が妊娠中に初めて染色体異常という言葉に出会い、よくわからないまま検査を受けてしまうこともある。そこで、これまで小学生向けの遺伝講座を実施してきた経験を生かし、高校生向けのプログラムを研究の一環として開発したのが今日行われる講座だった。

最初に「誰がどんな意見を言っても、否定しない」「いろいろな意見があった方が、勉強になる」と、大切な申し合わせをしたあと、授業が始まった。

まず、普段は看護学部で教鞭をとっている森藤香奈子さん(長崎大学准教授)が胎児の染色体異常を調べる出生前診断にはどんな検査があるのか、どんな病気がわかるのかを説明。

胎児の病気は何百種類もあって全部がわかるわけではないこと、検査は確かな結果が出る検査「確定的検査」とそうではない「非確定的検査」に分かれることなどもわかりやすく説明された。

次に長崎大学病院で本物の妊婦さんに向き合っている現役の認定遺伝カウンセラー・佐々木規子さんが教壇に立って、母体の血液検査「母体血胎児染色体検査(NIPT)」、いわゆる新型出生前診断を説明した。

撮影/河合蘭

「この検査はお腹に針を刺す羊水検査と違って流産の心配はありません。
ただし非確定的検査なので、ダウン症の場合『陽性的中率』は96.3%。ですから陽性と判定された人が千人いたら963人は正確ですが、37人は本当はダウン症ではないのです」
こうして検査の限界も理解できたところで、いよいよ選ぶ体験が始まった。