活断層の専門家、直下地震を警告!「いま一番危ない活断層はココだ」

実際に見て正しく知ろう「断層の恐怖」
中川 隆夫, ブルーバックス編集部

「そこがプロの力量を問われるところです。一般に、活断層調査はまず空中写真を見て、断層がこのあたりにあるのかなぁと、あたりを付けます。山の尾根や、谷などの地形が一様にズレている場所があるんです。それを見つけるのが第一歩。これは数十年にわたって先人の研究者たちが脈々と続けてきました。

日奈久断層帯の場合は、すでに活断層の大まかな場所が分かっていますから、次に現地に行って調査ポイントを探るんですね。空中写真を見ると分かりますが、このあたりは山地と平野の境が一直線になっています。このスケールで見ると、分かりやすい断層帯です」

日奈久断層帯を空から見た写真 (出典:「全国最新写真(シームレス)」(国土地理院)をもとに産総研作成)

確かに。見ると山と平野の境が直線になっている。ここをごっそり掘ればいいのだろうか。

「調査のために掘る溝(穴)のことをトレンチと言いますが、トレンチ調査をするには数ヵ月にわたって土地を所有者からお借りすることになりますし、掘ったときにその断面にきれいな活断層のズレが出ないといけません。場所の特定はなかなか難しく、ものすごくプレッシャーを感じます」

「沢」の気持ちになって考える

ズレを目視で確認するためには、見た目の違う堆積物が層を作り、“シマシマ”になっている必要がある。そこで目を付けるのは、小さな沢のような流れが平野に出た扇状地だ。

沢の流れが激しいときや大きな川なら、たまるのは礫などの小石だが、沢の流れが穏やかなときなら、細かい砂や泥のような堆積物がシマシマを作り上げるからだという。

「どのあたりにシマシマの地層がありそうかは、沢の気持ちになって考えてみるんです。大雨のときはこっちに、普段ならこっちに流れ出るだろうな、断層がずれ動いて流路が変わっちゃったらこっちに……と、現地に立って考えると、見えてきます」

え? 沢の気持ちですか。

「そう言うとみなさん笑いますけど、まさに沢の気持ちなんですよ。微妙な地形の違いや水量で水は流れを変えます。堆積物も変わります。木の年輪と同じように、シマシマの模様が地中に現れると、地震によるズレは見つけやすいのです」

あたりを付けて、数ヵ所をボーリングしたのち、ようやくトレンチを掘る。

ところが今回、最初の掘削では、ズレが出なかった。ヘルメット姿にコンビニ弁当で、穴の底で格闘しながら数週間。地元の土木業者のおじさんから哀れみの眼差しを受けながら掘り進めた結果が、出なかったでは……。

「絶対に出ると断言して掘っているので、困りました。研究者の沽券にも関わるし、ここは掘っているときに3回も台風に襲われて苦労した場所で、どうしようかと……。

でも、掘るための重機を出し入れする坂の端に、それらしき跡を見つけて、そこをさらに掘り進めたら出たんですよ。いやー、クビがつながったワ、と胸をなでおろしました(笑)」

やっと活断層が出てきた

見事なシマシマの地層が、断層の右と左で、スパッとズレている。これぞ事件の痕跡ともいうべき証拠の発見だ。下のほうには7300年前に大爆発を起こした薩摩半島沖の海底火山・鬼界カルデラの火山灰層も見つかった。年代のハッキリしている堆積物は貴重な存在だ。

あの「タッキー」も地質調査に同行!

「鬼界カルデラの巨大噴火の調査には、タッキー(元俳優の滝沢秀明さん)も参加しているんです。タッキーのおかげもあって(笑)、この日奈久断層帯の地震は7300年前から7000年前の間に一回、そして3100年前から1000年前の間にもう一回あっただろうと推定。後に7300年より前にもう一回の活動を推定しました」

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