仕事をしていると、運・不運に見舞われることがある。就職活動も運・不運があるし、仕事の配属、関わるプロジェクトなどでも運・不運はある。
私など、就職活動はすっかり玉砕してしまった。20代の頃は、その不運を呪っていた。「どうしてうまくいかないのか」と自分を責めた。うまくいっている人たちを羨んだ。
おまけに転職も納得いくものにはならなかった。コピーライターにはなれたものの、労働条件が厳しかった。裁量労働制の新会社で、残業代がなかった。労働時間は前職から比べると圧倒的に長く、給与は大きく減った。さらなる転職をしたら今度は会社が倒産。不運の塊のようだと思っていた。
ただ、振り返ってみると、もし大手広告代理店を目指していた最初の就職でうまくいっていたら、今の私のキャリアはない。こうして本を書いていることもなかっただろうし、3000人にも及ぶ人たちに取材を重ねるという貴重な経験はできなかった。
人間としても、学びを深められなかったと思う。「思い通りの人生になった」と、鼻持ちならない会社員になっていたかもしれない。遊び呆けて勉強も努力もせず、むしろ足元をすくわれ、人生がうまくいかなかったかもしれない。
私がリクルートで手がけていた仕事は、求人領域のコピーライティングだった。コピーライターの花形はやはり商品広告だろう。テレビCMを手がけたり、ポスターを作ったりする。大きな広告賞を受賞したり、海外に作品を出品する人もいる。
そういう世界に憧れなかった、といえばウソになる。20代の頃は「いつかそういう世界に」とずっと思っていた。