病院はパンク…新型肺炎の感染急拡大、SARSと決定的に違うこと

勢いはとどまるところを知らない
ふるまい よしこ プロフィール

また、そのうち多くの人が重症ケース優先の診断の試薬を回してもらえず、単純に「ウイルス性肺炎」と診断されて自宅待機を余儀なくされており、さらにはそのまま症状が悪化して亡くなった人も少なくないとされる。しかし、これらの人たちは「新型コロナウイルス感染による肺炎」(以下、「武漢肺炎」)という診断を受けていないために、政府が発表する数字には含まれていないのだ。

現在、都市は封鎖され、たよりの病院は満杯、そして疑似患者を抱えて過ごす家族たちの不安は募るばかりだ。ただ、街頭には人影はほとんどないものの、食品を提供するスーパーマーケットなどで撮られた映像を見ると、人びとができるだけ落ち着いて行動しようとしており、幸運にもこの都市の住民の多くが理性的に考えて行動できる人たちがたくさんいることを示している。

感染病が蔓延する中、街どころから家からもほとんど出ることができない生活を続けること、さらにはそれがいつまで続くのか分からないということがどれほどのプレッシャーか。それを考えると、武漢市民の自制心には頭が下がるばかりだ。

1月27日の武漢市街の様子〔PHOTO〕Gettyimages
 

交通の要衝・武漢が「封鎖」

「武漢肺炎」のゆくえを考えるためには、武漢という都市の性質を知っておくことが重要だ。武漢は長江沿岸に位置し、経済的に発達した中国東部の沿海地区と内陸部の真ん中あたりにある中堅大型都市で、湖北省の省都(日本の県庁所在地に相当)である。

1950年代に国有鋼鉄企業が設立され、長らく造船や自動車生産基地として発展してきた伝統的工業都市である。そこが21世紀に入ると、科学技術面での開発基地に認定され、現在は理工系大学トップ3に入る華中科技大学を中心にした「IT産業基地化」の開発計画も進められている。

ホンダや日産、トヨタといった日本を代表する車両メーカーのほかに、仏ブランドのプジョーやシトロエンの生産工場もあり、このため外国人の往来も多い。一方で、北京や深センに本部を持つ大型IT関連企業が内陸市場に向けた第二拠点を武漢に設置しているケースも少なくなく、それが市外から多くの若手ITエンジニアたちにとって魅力的な雇用環境を作っている。

国家政策の下、伝統産業と新時代の産業という二つの車輪に支えられているのがこの武漢という都市の経済状況である。

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