1月31日 鹿児島で日本初の5つ子誕生(1976年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

1976年のこの日、鹿児島市立病院で男児2人、女児3人の5つ子が誕生し、大きな話題になりました。

5つ子の誕生経緯

両親である山下夫妻は、東京在住でしたが、出身がおふたりとも鹿児島県でした。はじめての出産だった妻の紀子さんは、帰郷して出産に備えることにしたのでした。

受診した鹿児島市立病院の産科部長・外西寿彦医師は、紀子さんのお腹が同じ妊娠週数の妊婦に比して大きいことから双胎(ふた子)を疑いました。その時、妊娠38週で腹囲99cm、子宮の長さ(寝た時に下になる面の長さ:子宮底長)43cmだっということです。多胎妊娠では早産が多く、妊娠高血圧症候群の合併が多いため、外西医師は万全の体勢を整えました。

1月31日の朝から陣痛がはじまり、お昼過ぎに出産がはじまりました。一般的に、多胎を理由とした帝王切開はなされませんが、山下さんの場合も自然分娩によって、第1子娩出後、2~3分おきに次々と産まれ、出産に要した時間はおよそ9分ほどだったそうです。

体重は、いちばん大きな子で1800g、いちばん小さな子で990gで、未熟児のレベルでしたが、慎重な保育管理によって、5月にはお母さんとともに、全員退院することができました。同病院では、やはり外西医師によって1980年3月に2例目となる5つ子が生まれています。

1980年に「山下家の五つ子ちゃん、四歳の誕生日」として報じられた写真 Photo by JMPA

多胎妊娠とは

この頃から多胎妊児の出産は増加しはじめ、この40年間で2倍近く増えています。

多胎妊娠は、2個以上の妊卵が同時に着床している状態を言います。ヒトの子宮の構造は、単胎にあわせたつくりとなっているため、母体障害や低出生体重児による周産期死亡率が高いなど、ハイリスク妊娠に含まれます。

一般には、妊娠前期における目立った特徴がないことから気づかれにくいものでしたが、昨今では適切な検診によって早期の診断がつくようになっています。臨床的には、腹部の複数の部位で胎動を感じることなどが挙げられます。

多胎には、1個の成熟卵と1個の精子からできた受精卵がある時期に複数に分離した「1卵性」と、同時かきわめて短時間に起こった排卵に、それぞれ別の精子が受精する「2卵性」のものがあります。

1卵性の場合は、遺伝子的に同一で児の性も同じです。一般的には、胎盤は1つで共有しているか、一見分かれていても血管を共有(血管吻合)していることが多いと言われています。

2卵性では、同時に生まれた兄弟といった存在で、性も同一とは限りません。胎盤は、胎児それぞれに個別に有しているか、あるいは膜で区切られているなど完全に別々であるとされています。

【図】多胎のタイプ
  おもな多胎のタイプ(双胎の場合で示した 参考:講談社『医科学大事典』31巻)

日本人では7:3程度で1卵性の場合が多いと言われていました。

排卵誘発剤による過剰排卵

多胎妊娠の原因のひとつに、排卵誘発剤の使用が考えられます。排卵誘発剤とは、卵胞の成熟を促し、排卵を誘発する薬剤のことです。排卵誘発剤のうち、脳から放出されて卵巣を刺激する性腺刺激ホルモンそのものである「ゴナドトロピン製剤」は強力な排卵誘発効果があり、多胎妊娠の発生頻度が高いことが報告されています。

とくに閉経後の女性の尿から精製した、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)を含有する「HMG製剤」の場合、通常片側の卵巣からの排卵が、両側卵巣から起こると考えられています。

【図】女性ホルモンの動態
  女性ホルモンの働き figure by gettyimages(anatomy), bluebacks(text)

こうして複数個の卵子が排卵されるため、多胎妊娠の可能性が高くなるというわけです。

妊婦管理や周産期医療の進歩による多胎児の予後向上

しかし、多胎妊娠の増加とともに、ハイリスク妊娠や未熟児に対する管理が格段に進歩したことによって、早期流産が防がれたり、平均約4倍と言われていた周産期死亡事例が減ったりしたため、無事に多胎児を出産、生育する例は格段に増えています。

【写真】医療の進歩により、多胎児出産を含むハイリスク妊娠の事故も減った
  医療の進歩により、多胎児出産を含むハイリスク妊娠の事故も減った photo by gettyimages

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