新型肺炎「武漢に住む日本人」は全員無事に帰国できるのか

対応にあたったコンサルタントに聞く
松岡 久蔵 プロフィール

自衛隊機が使えないため、今回民間機をチャーターすることになったわけですが、そのためには大型機を航空会社から融通してもらう必要がありますし、着陸枠などについて中国側と交渉する必要も出てきます。

今回、日本よりも先にチャーター便を飛ばした米国をはじめ、武漢には日本以外の外国人も多くいます。各国が競って枠を確保しようとしていますから、これもなかなか難しい。そういう意味では、日本政府は比較的迅速に対応できたと思います」

 

「すぐに全員帰国」は難しい

しかし、現地に拠点を構える日系企業は、まだ安心というわけにはいかない。現地スタッフを全員引き上げることは難しいからだ。

「例えば、製造機械の盗難リスクなどがあるので、工場の操業を停止することは事実上不可能です。となると、何人かは必ず残らないといけない。

そうした展開の想定を含めて、今回明らかになったのは、海外駐在地で感染症が広がった際の対応マニュアルの整備が、日本企業の多くで不十分であるということでした。特に従業員数が30人程度の中小企業では、なかなか事前に有効な対応策を立てることは難しい。

日本企業は海外展開する際、政治的暴動やテロ対策などの対応マニュアルはしっかり作るのですが、感染症などのバイオリスクについては日本の衛生状況がよいためか、感度が働きにくい。

あまりいい言い方ではないかもしれませんが、今回の新型肺炎によって海外駐在地での感染症対策の必要性が認識されたと思いますので、過去の感染症の事例も踏まえつつ、これを機に改めて対策を練っておくべきでしょう」