ドラマも問いかける「最期をどう生きるか」

抗がん剤をやめるか否かという意味は、がんの進行で体力が低下している最期に、つらい抗がん剤に耐えて生活するのかということだ。

体力もある元気なうちに抗がん剤をやめ、緩和医療でつらさを極力やわらげるのか。このふたつでは、後者のほうが人生の最期の時間が違うというのは頭では理解できる。が、この取材時に、“亡くなる何ヵ月前まで抗がん剤を続けたいですか?”と勝俣医師に問われ、私は答えることができなかった。

「腫瘍内科医には、“亡くなる3ヵ月前には抗がん剤を止めたほうがいい”という目安があります。ただ、現実には、亡くなる1ヵ月前まで積極的な治療を受けていた人の割合は65%。79%の方が3ヵ月前まで積極的な抗がん剤治療を受けているのが現状のようです(がん患者白書2016 がん遺族200人の声より)」(勝俣医師)

進行がん患者さんにとって、抗がん剤を止める=みすてられた、治療をしたら少しでも長く生きられるだろうと思ってしまいがちだ。しかし、抗がん剤をやめ、緩和ケアに切り替えるメリットがあると勝俣医師は語る。

「がん患者さんは、抗がん剤などの標準治療をやめても、すぐがんが悪化してしまうわけではありません。むしろ、抗がん剤をやめることで、かえって元気になることもよくあります。そして、実際には、亡くなる1ヵ月くらい前でも元気なことが多いんです。その元気な時間を一番大切に過ごしてほしい。その時間を副作用が避けられない抗がん剤治療の時間に使ってほしくないので、根気よく説明します。

終末期に抗がん剤を止めた私の患者さんは、亡くなる1週間前までテニスをしていました。別の患者さんは、ハワイが大好きで、最後にもう一度行きたいからと、酸素ボンベを持参してハワイに行かれました。帰った後、予約していたホスピスに入院されました」(勝俣医師)

ドラマの第2話で、緩和病棟から抗がん剤の部屋へやってきた女性患者が描かれた。緩和病棟はホスピスと同じで抗がん剤などの積極的治療を終えたあと、緩和医療で苦痛を和らげる終末医療を行う場所だ。その女性もいたって元気に見えたので、亡くなったと聞いた男性乳がんの患者が驚くシーンがあった。

確かに私の友人は、亡くなる前日まで仕事をしていた。亡くなる一週間ぐらい前にご飯を一緒に食べた友人もいる。もちろん、みんながそうではないし、当人の思いは計り知れないが、その姿はとてもその人らしかった。

海外では大半が自宅を選択し、出来る範囲で人生を楽しむ人も多いという。photo/iStock