「抗がん剤のやめどき」の本当の意味

前に抗がん剤の重要性について記事で書かせていただいたが、緩和医療では「抗がん剤のやめどき」も腫瘍内科医の重要な仕事になると勝俣医師はいう。

「がんの進行が早かったり、勢いがある場合、抗がん剤の効果よりもはるかに、身体へのダメージが勝ってしまい、体力を奪ってしまいます。腫瘍内科医は、こういった抗がん剤のやめどきを考え、緩和医療を中心にしていく時期を見計らうことも大切です。そのために、進行がんや再発した患者さんには、最初の段階で抗がん剤には限界があることを説明することも重要なのです」(勝俣医師)

ところが実際は、患者や患者家族の理解には壁があるという。

「2011年の調査では、進行がん患者さんの約3割の方が、がんが完治すると誤解していることが分かりました。2012年の調査でも、進行した肺がん患者の69%と大腸がん患者の81%が、抗がん剤などの治療で自分のがんが治癒する可能性が乏しい現実について理解していませんでした。完治すると思っている患者さんやご家族は、終末期まで過剰な抗がん剤に進んでしまいがちな傾向があることが分かっています」(勝俣医師)

ただ、少しでもがんが治る可能性があると思えば、どんなにつらい治療でもしたい、というのが患者や家族の心情だろう。まさにドラマで描かれていたシーンと同じだ。

「患者さんに希望を持たせたいという一心から、治癒が難しいことをきちんと伝えず、患者さんの求めに応じ、最期まで抗がん剤でがんを叩こうとする医師が多いですね。私が“抗がん剤を止めましょう”と患者さんに言うと、“見捨てるんですか”と言われます。でも、“それは逆なんですよ”と。患者さんのお話をできるだけ丁寧に伺い、何度も何度も説明します」(勝俣医師)

がん治療には重要な抗がん剤。よいやめどきを考えるのも腫瘍内科医の仕事だ。写真/フジテレビ