犬鳴トンネル(写真はすべて吉田悠軌撮影)

日本最恐の心霊スポットから生まれた「犬鳴村伝説」その誕生と現在

「この先、日本国憲法つうじません」

日本最恐の心霊スポット

福岡県の山間部「犬鳴峠」には、もう使われなくなった旧道と廃トンネルがある。かつて、その「旧犬鳴トンネル」のそばに、こんな看板がたてられているとの噂が流れた。 

「この先、日本国憲法つうじません」

その不穏な文言を無視して奥に踏み入れば、ボロボロの小屋が点在する集落を発見するだろう。しかしそれには、命の危険を覚悟しなければならない。

いまだ山中に人目を避けて暮らす「犬鳴村」の住人たちに襲われるからだ。

「犬鳴村」とは、江戸時代より厳しい差別を受けたために閉鎖された謎の集落で、行政記録からも地図からも抹消されている。村人は今も自給自足で暮らしているが、非常に排他的であり、侵入者を発見したとたん、斧などで攻撃してくるという……。

もちろん、この「犬鳴村伝説」は、無責任なデマである。

もともと心霊スポットだった旧犬鳴トンネルに、おそらく1990年代、架空の「犬鳴村」にまつわる伝説が付け加えられただけだ。それだけなら、全国各地に点在するローカル怪談の一つに過ぎないはずなのだが……。

そう単純な話で終わらないのが、犬鳴村伝説の厄介なところだ。

この場所にまつわる噂や心霊話は、日本の怪談カルチャーにおいて、どこか別格扱いされている。旧犬鳴トンネルはいまだに「日本最恐の心霊スポット」と呼ばれ、今年2月にはホラー映画『犬鳴村』も公開される。

2020年代の今もなお、犬鳴村伝説が人々の注目と恐怖を集めるのはなぜだろうか。