バナデロでココナッツを売っていた男性を描きながら話した。余生を故郷のサイパンに戻って過ごしているという。
 

近くのバナデロでは、趣味のファームで育てたフレッシュなココナッツを売っていた男性にも声をかけた。サイパンで生まれ、一度はアメリカ本土に移ったが、仕事を引退して故郷に戻ったのだという。絵を描きながら、いろいろな話をした。

「歴史は大事にした方がいいけど、戦争はもう昔のことでもある。今は若い人たちもみんながんばっているよ。自分が生まれた島を出ずに、ここで仕事をする人も増えているし」

バナデロでココナッツを売る老人を描いていた横には、ノニの木に侵蝕された戦車がそのまま放置されていた。この国では、戦争の記憶に順路をつけたり、ショーケースに保管して見せたりはしない。ありのままの姿であの時から、そこにずっとある。

男性の横には、ノニの木にすっかり侵蝕された戦車があって、その時の長さを感じさせてくれた。今日も、バンザイ・クリフやバード・アイランドにはエネルギッシュな太陽の光が注ぎ、海中の戦車は魚たちの棲み家になっている。壊されたガラパン教会の鐘楼の前にも、真っ白な教会がシンボリックに建つ。空に向かって翼を広げて羽ばたくように、強く。

かつてサイパンの先住民族が大量虐殺されたカラベラ・ケーブで、その歴史に思いを馳せる。
カラベラ・ケーブの入り口でフレームツリーの花を拾った。

PROFILE

エイドリアン・ホーガン Adrian Hogan
1986年生まれ。オーストラリア、メルボルン出身。2009年よりイラストレーターとして活動を開始。2013年から東京にベースを移す。広告、書籍、雑誌など幅広いシーンで活躍。
www.adrianhogan.com


●情報は、2019年12月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Norio Kidera Text:Asuka Ochi Edit:Chizuru Atsuta