最善を尽くしたつもりだったのに

差出人は「ありがとうございました」と言って帰った奥さまでした。手紙には「人殺し」と書かれた上で、こういう症状のときに何もしてくれなかった、死んだのは医療ミスだ。どうしてくれるんだという内容が書き連ねてありました。
状態に応じて出来る限りの治療をし、その都度説明も行い、最善を尽くしたつもりだったのですが……。

手が震えました。医師でいることが怖くなりました。

すぐに上の先生に相談をすると、こう言われたのです。
「知っています。私のところにも同じ手紙が届いています」

ご遺族の方は、院長を始め何通も同じ内容の手紙を同時に送っていたのです。
「僕たちはカルテも見ています。小田切先生がちゃんとやっていたのを見ているし、知っています。だから僕たちがひきうけるので安心してください」

その後どうなったかは私は知りません。恐らく院長や病院担当弁護士が事実をお伝えする手紙を返送したのだろうと思いますが、とにかくそれ以降は手紙が来ることも、事情を聞かれることもなくこの問題は終わりました。

しかし私の中で「医師はこうして誠実にやろうとしても責められるんだ」という恐怖も感じるようになりました。

完全な答えがないからこそ、必死に治療法を考える。誠実にやったつもりが攻撃されて、ショックは大きかった(写真の人物は本文と関係ありません) Photo by iStock