『キャッツ』より

「猫に人間のDNAを残したかった」映画『キャッツ』監督の真の狙い

前代未聞のビジュアルが生まれた理由

現在公開中の映画『キャッツ』は、『レ・ミゼラブル』(2012)でアン・ハサウェイの助演女優賞を始めアカデミー賞3部門を受賞した映画監督、トム・フーパーが全世界累計観客動員8100万人を記録したミュージカルの名作「キャッツ」を実写映画化した作品だ。

 

フーパー監督といえば、『レ・ミゼラブル』の他にも『英国王のスピーチ』(2011)でアカデミー賞監督賞を含む4部門を受賞し、『リリーのすべて』(2015年)でアリシア・ヴィキャンデルにアカデミー助演女優賞をもたらした、今をときめくオスカー監督である。

トム・フーパー監督〔PHOTO〕奥野和彦

そんな彼が名作ミュージカルを監督するとあって、非常に前評判が高かった本作。しかし、アメリカでスター・ウォーズの最終章『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の対抗馬として2019年12月20日に同日公開されたものの、人間と猫をミックスした前代未聞のビジュアルがアメリカの批評家から酷評されてしまい、今年のオスカーの賞レースから外れてしまった。

今もまだ賛否両論が飛び交う『キャッツ』のプレミア上映に来日した監督に、キャラクターのビジュアルに込めた思い、そして寄せられた声についてどう感じているのか、率直に語ってもらった。

猫に人間のDNAを残した理由

主役のヴィクトリアを演じたのは、英国ロイヤル・バレエでプリンシパルを務めるフランチェスカ・ヘイワード。生身の人間の動きとは思えない華麗なダンスを披露している〔PHOTO〕『キャッツ』より

――現在公開中の猫のキャラクターのビジュアルは予告編とは違うビジュアルに仕上がっているそうですね。正直、あまり違いが分かりませんでした……。

トム・フーパー監督(以下、フーパー監督): 予告編は2秒ほどのショットが繋がって作られているので、本編との違いが分からないかもしれませんね。でも、もし30秒間同じショットを見続けたら、本編との違いは明らかだと思います。予告編のビジュアルを変えた部分は、主に顔です。人間の目の辺りはメイクですが、それ以外の顔や体には猫の体毛を1本1本付けているのですが、出来上がったものを見ると猫の毛で顔が隠れているような気がしました。なので、顔と体毛のバランスをデザインし直して、人間の顔をできるだけ残すように編集を重ねました

撮影自体は2019年3月に終わっていましたが、予告編はその3ヶ月後の6月に流さなくてはいけなかったので、予告編で使われている映像は完成には程遠いものでした。2、3年前なら不可能だった最新のVFX技術を使い、本当にプレミアぎりぎりまで週7日間、1日16時間も働いて編集し続けたんですよ。