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「デジタル遺品」が遺族を思わぬリスクに陥れる

株、FX、仮想通貨で注意すべきこと

パソコンなどのデジタル機器やネット上に遺る「デジタル遺品」。他人では詳細が分からないものが多い一方、実際に金銭的価値を持つものが急増したため、相続の場で問題化し始めている。

デジタル遺品の中でも特に、金融的な意味合いの強い株、証拠金取引、FX、仮想通貨が遺されてしまったら、いったいどんな事態が起こるのか。『スマホの中身も「遺品」です』の著者である古田雄介氏に解説してもらった。

遺品としての株券

2019年1月現在、株などの有価証券は、むしろデジタルで所有するのが基本となっています。前述のように2009年1月に公開株の電子化が実施されてからは、証券保管振替機構(通称・ほふり)が証券会社を通して上場株式を管理するようになっており、名義変更もほふりが担っています。

今でもたまに遺品整理中に紙の株式、いわゆるタンス株が見つかることがありますが、紙のままでは相続できない決まりになっているため、発見をきっかけに電子化することになります。

そして相続ですが、そもそも遺族が気づかないことには何も起きません

遺族がノーヒントで見つけ出すには、ファイナンシャル系アプリやブックマークを開いたり、預金口座からのお金の動きやブラウザーの閲覧履歴、郵送物などを調べたりといった地道な作業が必要になるでしょう。見つかってしまえば、あとは証券会社のサポートに沿って手続きを進めることになります。

 

証拠金取引の放置は危険

同じ証券会社の取扱商品の中でも、怖がられがちなのが証拠金取引です。先物取引や信用取引、オプション取引などがありますが、なかでも人気のFX(外国為替証拠金取引)が遺族の不安の種になることが多いようです。

証拠金取引は元手よりも大きな額を動かすことで大きな差益が得られる商品ですが、予想と反する動きがあると逆に大きな差損を受けます。

たとえば、100万円の証拠金で10倍の1000万円分の外貨を取り引きするとします(手数料など細かなコストは無視してください)。為替変動により価値が1050万円相当になったら差額の50万円が儲けになりますが、逆に950万円になったら50万円の損失になります。さらに900万円まで下落したら差損は証拠金と同じ100万円に達するので、追加の保証金を投入しないと取引は継続できません。ここで投入をしなければ元手の100万円を失うだけですが、急激な変動があると追加保証金の支払い猶予までに890万円まで落ちた、などということも起きる可能性があります。こうなると、取引から降りても10万円の支払いが残ります。それが負債になるわけです。

そして、この変動時に持ち主が亡くなっていた場合、負債は遺族に向かうことになります。遺族が早めに気づけば、本人なりに頑張って運用していた成果が残っているうちに精算できるので、プラスの資産として対峙できる可能性が高まりますが、放置期間が長引くと、管理者のいない居眠り運転のような危険な状態になってしまいます。