中国が「軍民融合」で進めるAI軍事革命…このまま独走するのか

倫理と実用の相反に悩むアメリカ
野口 悠紀雄 プロフィール

危機感を強めるアメリカ

中国の軍事的脅威の高まりに対する指摘が、アメリカで相次いでいる。

ペンス米副大統領は、2018年10月4日に行なったスピーチで中国を厳しく批判し、「中国政府は、アメリカの陸、海、空、宇宙における軍事的優位性を損なわせることを優先させている」と指摘した。

この演説は、チャーチルが首相退任直後の1946年3月に行った「鉄のカーテン」演説になぞらえて、新冷戦宣言だと言われる。

ペンス演説は、米中貿易戦争の本質が、米中間の広範な分野での覇権争いであることを明示している。

 

米国防総省は、2019年1月15日、「中国の軍事力(China Military Power)」と題する報告書を公表した。その中で、中国は世界最先端の兵器システムの実戦配備を準備していること、一部の兵器はすでに競争相手の国々を上回っていることなどを指摘した。

また、同年5月2日には、2019年中国の軍事力に関する報告書を公表し、中国が「あらゆる手段を用いて外国の軍事技術を獲得している」、「サイバー攻撃、外国への直接投資などによって、先端技術を不当に得ている」と非難した。

「一帯一路」に関しては、海外における中国の軍事拠点の拡大につながると指摘した。中国の目標は、2049年までに世界一流の軍事力を保有し、「総合的な国力の増大によって、インド太平洋地域における抜きんでた大国になることだ」としている。

このような危機感の高まりを反映して、軍事予算も拡充されている。

米議会上院は 、2019年12月、2020会計年度(19年10月~20年9月)の国防予算の大枠と国防政策の方針を定めた国防権限法案を可決した。

2019会計年度に続き、中国への対抗を強く意識して、AIなど先端的軍事技術への重点投資を行う。

「中国は自律型兵器から指揮統制への活用まであらゆる軍事利用を目指している」とし、「潜在敵国が完全なAI能力を備えた兵力を保有し、我々が持たないという事態は望ましくない」と強調した。

これまでAIが導入されていたのは、兵器の劣化を予測したり故障を予防したりすることや、人道支援・災害救助、サイバー防衛が中心だった。

今後は、自律型兵器や指揮統制を想定したAI利用をめざす中国に対抗するため 、これまで控えてきた戦闘作戦でのAI活用に向けた研究に乗り出す。