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米イラン対立で「第三次世界大戦」は本当にもうないといえる…のか?

最大リスクはトランプの「ラフな判断」
村上 和巳 プロフィール

「ラフ」な判断をしてしまうトランプ

前述のハメネイ師の8年ぶりとなる金曜礼拝での演説後、トランプ大統領とハメネイ師はともに自身のTwitter上で相手のツイートを引用しながら舌戦を行っていたが、これはまさに軍事的衝突の事実上の「終戦宣言」であることも意味する。もっとも今後の不安要素は全く消えたわけではない。

まず、そもそもアメリカはなぜこの時期にソレイマニ氏を爆殺したのか?

 

発端は昨年末、ソレイマニ氏の影響力が強い前述のカタイブ・ヒズボラが、イラク北部キルクークにある米軍基地をロケット弾で攻撃し、アメリカ人軍属1人が殺害されたことにある。

これに対して米軍はカタイブ・ヒズボラの拠点を空爆することで報復。その結果、大みそかにはカタイブ・ヒズボラ支持者らによるデモ隊が在イラク・アメリカ大使館へ押し寄せ、大使館の壁への放火や館内へ侵入しようとする抗議活動が行われた。

これに激怒したトランプ大統領が報復措置を指示。ロサンゼルス・タイムズの報道よると、マーク・エスパー国防長官、マイク・ポンペオ国務長官、マーク・ミリー統合参謀本部議長らが同席するなかで示された報復選択肢のスライドの中に、選択肢の一つとして形式的に加えられたのが、カタイブ・ヒズボラを裏で操るソレイマニ氏の殺害だった。

この報道によると、周囲はこの選択は最もないだろうと考えていたが、大統領アドバイザーの一部にいる反イラン強硬派の勧めで、トランプ大統領はあっさりこれを選択したという。

この決定は、ウクライナ疑惑により下院での弾劾訴追というイメージの悪さを抱えるトランプ大統領が、2020年大統領選での再選を目指す中で、より強力な実績アピールを欲していた結果かもしれない。

そもそもアメリカ史上、政治家・軍人の経験なく当選したトランプ大統領にはこうした周囲が驚く言動が時折見受けられる。大統領選が進むにつれ、何らかの拍子に「ラフ」な判断をする可能性は残っている。

その意味でもう一つ気になるのは、イランおよび革命防衛隊の影響力のある武装組織らの動きだ。イランそのものは全面戦争は望んでいないのは前述の通りだ。

しかし、ウクライナ国際航空の旅客機誤撃墜で明らかになった最高指導部に対する不満が、何らかの形で再度表面化すれば、国民の目をそらすためにイラン自身が小規模攻撃などで対米緊張をあおる可能性はある。

また、ソレイマニ氏が育成に貢献したヒズボラをはじめとする武装組織も今回の爆殺への報復を宣言。実際、イラクではイランによるミサイル攻撃後に在イラクアメリカ大使館敷地や米軍駐留基地に正体不明のロケット弾攻撃が行われている。

こうした攻撃などが想定外の被害につながり、これにトランプ思考が悪い形で重なれば、年初以上の衝突にエスカレートする可能性は否定できないのだ。