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米イラン対立で「第三次世界大戦」は本当にもうないといえる…のか?

最大リスクはトランプの「ラフな判断」
村上 和巳 プロフィール

中東イスラム圏の「政治指導者発言」の読み方

ただ、イランも含めた中東イスラム圏の政治指導者による強気発言の解釈には一定の注意が必要である。

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もともとが部族社会だったこの地域の政治指導者は、概して周囲から言葉と行動の両面で象徴的な「強さ」を求められる。つまり政治指導者の激しい言葉はほぼ国内向けである。裏を返せば実質的には「言うだけ番長」のことも少なくない。

アメリカ国防総省は最近になって今回の攻撃で脳震盪などの負傷者が34人に上ると発表しているが、死者はいまだ報告されていない。しかし、前述のように攻撃直後のイラン国営放送はアメリカ側の死者は少なくとも80人と報じた。

これは明らかにアメリカの発表の方が正しい。理由は単純で、民主主義国家であるアメリカの場合、死者発生時に遺族の口を完全に封じることはほぼ不可能。イランの言う通り死者が発生すれば、確実に遺族の声が報じられる。ここから死者ゼロは確定だ。

では、イランはなぜこうした報道をするのか?

 

イランでは衛星放送受信が法律で禁じられており、国民の多くが国営放送を情報源としている。もちろん現代ではネットもあり、イラン国内でも秘密裏に海外放送を受信している人たちはいるものの、それなりに多数の国民にがこの報道を信じる。

いわば、イラン最高指導部は言葉尻が激しい報復宣言とミサイル攻撃による虚偽の死者発生報道で、「言葉」と「行動」の両面で国民に結果を示せたことになっている。

また、今回の攻撃後、複数のメディアでイランが事前に第3国を通じてアメリカに対して攻撃を通告し、その結果死者発生が防げたとも報じられている。報復という「建前」と全面戦争回避という「本音」を両立させているわけだ。結局、米イラン緊張とは事前にシナリオが決まっているプロレスみたいなものに映るのだ。