しかし意外に思われるかもしれませんが、裁判官にとっては刑事事件よりもむしろ民事事件の方にやりがいを感じられることも多いのです。
というのも日本の刑事事件は起訴状一本主義といって、裁判前に届くのは起訴状だけで法廷に入るまで他の情報が全く入ってこないのです。証拠を見ることもできません。
検察官が起訴状を読み上げた後、冒頭陳述で「こういう事件です」と述べます。
それから初めて証拠が出され、審理している間に裁判官が心証を作っていくという流れになります。
そしてそもそも検察は有罪になりそうもない事件は起訴しませんから、裁判になった時点でほぼ有罪です。
中には逆転無罪ということもありますが、多くは結論が決まっているような感じなのです。
その点、民事は「どういう結末になるか」ということについては、裁判が始まった時点では分かりません。しかも事件の種類がバラエティーに富んでいます。
医療過誤、労働事件、建築関係、会社更生、知的財産訴訟など、そのときどきでさまざまな事件を担当することになります。
全ての事件にいろいろな法律的な論点があり、それぞれについて緻密な判断が求められます。
裁判官にとってはそれが面白いわけです。
民事事件には一般の人が刑事事件に感じるようなドラマはないことが多いかもしれませんが、玄人好みの「面白さ」に満ちています。