地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1996年の今日、IBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」が、当時チェス世界チャンピオンであったガルリ・カスパロフに初勝利しました。試合は6番勝負で、勝利したのはその一局目です。
ちなみに、6番勝負全体で見ればカスパロフが3勝1敗2引き分けで勝利しています。
ディープ・ブルーはIBMが1989年より開発に着手したもので、その目標はすでに1985年より世界王者に君臨していたカスパロフを打ち負かすことでした。
1秒間に2億手の先読みを行い、対戦相手となる人間の思考を予測します。予測の方法は、対戦相手つまりカスパロフの過去の棋譜をもとに局面の良し悪しを数値化し、効果があると考えられる手筋をすべて洗い出すというものになります。
初勝利のあとも研究を積み重ねた翌1997年、再度戦ったディープ・ブルーは2勝1敗3引き分けで見事カスパロフに勝ち越しました。
ディープ・ブルーの表向きの目的はチェスで人間の世界王者に勝利するというものでしたが、その背景にはより高度な問題処理能力、高速な計算能力、膨大な量のデータマイニングといった、多くの分野で技術を発展させるという目的もありました。実際にIBMは、この研究を通して得た技術を自社製品などに適用しています。
チェス世界チャンピオンがディープ・ブルーに敗北してから20年以上が経過した現在、スマートフォンで気軽に再現できるプログラムに対してもチェスのトッププレイヤーは勝利できなくなりました。
しかし、チェスの人気は衰えるどころか、これまで以上に注目を集めています。コンピュータを用いた練習方法や思考法の導入など、新たな刺激が与えられたからでしょう。
ディープ・ブルーは、チェスの世界を変える嚆矢となったのです。