11年ぶりVで流れた早稲田ラグビー部歌『荒ぶる』に込められた意味

歌いながら男たちは涙を流した
松原 孝臣 プロフィール

優勝以外は敗北

健闘は認めない、優勝以外は敗北。目指すは優勝のみ。

その思想は、客観的には戦力的に他校に明らかに劣るシーズンであっても変わらない。

例えば、フォワードは他の強豪校に比べひと回りもふた回りも小柄、高校日本代表を経験した選手もごくわずか。進学校から入部してきた選手も多く、優勝に到底届くとは思えない戦力にあった1999年度(平成11年)。大学選手権1回戦で敗れたが、練習では、「日本一になるぞ!」と掛け声が飛び、コーチ陣にもまた、可能性をあきらめない姿があった。

 

「戦力が違うから勝てないとあきらめてしまえば、早稲田ラグビーのアイデンディティは消失する。」(日比野)

早大ラグビー部に根付く思想あればこそであった。

そしてその思想が込められているのが、日本一になったときのみ歌う『荒ぶる』にほかならない。

「荒ぶる魂」「荒ぶる主将」といった形容もまた、その重みを伝えているし、ときに聞こえる「荒ぶれ!」という言葉もまた同様だ。

つまり、『荒ぶる』が示しているのは、「可能性を信じてどこまでも勝利を追い求める」早大ラグビー部の根幹であり、途切れることなく伝えられてきた伝統である。それは組織としての強みである。進むべき先に迷ったとき、どのような状況であれ、ときの迷いが生じても、立ち戻ることができる原点があることで、最終的には揺らがなくなるからだ。

そんな土台があることは、スポーツに限らずいかなる組織にとっても、大切なことだろう。

早大ラグビー部が11シーズンぶりの大学日本一を果たすことができたのも、『荒ぶる』に象徴される揺るぎない指針が継がれてきたからこそだった。