健闘は認めない、優勝以外は敗北。目指すは優勝のみ。
その思想は、客観的には戦力的に他校に明らかに劣るシーズンであっても変わらない。
例えば、フォワードは他の強豪校に比べひと回りもふた回りも小柄、高校日本代表を経験した選手もごくわずか。進学校から入部してきた選手も多く、優勝に到底届くとは思えない戦力にあった1999年度(平成11年)。大学選手権1回戦で敗れたが、練習では、「日本一になるぞ!」と掛け声が飛び、コーチ陣にもまた、可能性をあきらめない姿があった。
「戦力が違うから勝てないとあきらめてしまえば、早稲田ラグビーのアイデンディティは消失する。」(日比野)
早大ラグビー部に根付く思想あればこそであった。
そしてその思想が込められているのが、日本一になったときのみ歌う『荒ぶる』にほかならない。
「荒ぶる魂」「荒ぶる主将」といった形容もまた、その重みを伝えているし、ときに聞こえる「荒ぶれ!」という言葉もまた同様だ。
つまり、『荒ぶる』が示しているのは、「可能性を信じてどこまでも勝利を追い求める」早大ラグビー部の根幹であり、途切れることなく伝えられてきた伝統である。それは組織としての強みである。進むべき先に迷ったとき、どのような状況であれ、ときの迷いが生じても、立ち戻ることができる原点があることで、最終的には揺らがなくなるからだ。
そんな土台があることは、スポーツに限らずいかなる組織にとっても、大切なことだろう。
早大ラグビー部が11シーズンぶりの大学日本一を果たすことができたのも、『荒ぶる』に象徴される揺るぎない指針が継がれてきたからこそだった。