夫婦別姓での不具合はあるのか

苗字というのは「家」の問題だけではなく、ブランディングにもつながるので、どの姓を選ぶかはキャリア上でも大きい影響がある

たとえばライフスタイルを扱う実業家のマーサ・スチュワートは、もともとポーランド移民系のコスタイラという苗字だったが、結婚によってスチュワートという、いかにも東海岸のワスプらしい苗字となり、「マーサ・スチュワート」ブランドを立ちあげて大成功した。もとの東欧風の苗字だったら、それほど成功しなかっただろう。

離婚後の現在はコスタイラ姓に戻っているが、ブランド名も通称もスチュワートを通している。

現実の生活でいえば、アメリカで暮らす上では、別姓を選択していて不都合はない。銀行口座のジョイントアカウント(共通口座)などは、当然ながら銀行員の前で、夫婦であることを証明するが、税法上でも混乱をきたすことはない。
 
ひとつにはアメリカではソーシャルセキュリティナンバー(社会保障番号)が長らく浸透していて、納税者番号にもなっているため、個人の紐づけができていることが挙げられるだろう。これは事実上の国民識別番号でもあるが、その是非については別の論議になるので、ここでは触れないでおく。

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日本ではなぜ反対なのか

グループソフトウェア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長は、2018年10月31日にアメリカのニューヨークで「選択制夫婦別姓」について記者会見を開いた。当時、青野社長を含む男女4人が、結婚時に夫婦別姓を選べない戸籍法は憲法に違反するとして「ニュー選択的夫婦別姓訴訟」と呼ぶ訴訟を起こしていた(2019年3月、敗訴)。

自身のパスポートを見せて説明する青野氏。仕事に使っている名前でホテルを予約するとパスポートとは異なるため、チェックインできないことも……photo by KAZUSHI UDAGAWA

日本では、選択制夫婦別姓について、「一部の反対する政治家は、『伝統的な家や家族の概念が崩れてしまう』と強硬に反対する」と青野氏はいった。

「今まで野党の議員が夫婦別姓を唱えると、与党としては反対せざるを得ず、政党の争いになることが多かった。けれども私の訴訟は、イデオロギーとは関係ないところで行っているもの。同性を望む夫婦は同姓を、別姓を望む夫婦は別姓を当たり前に選択できる社会にしたい、という主張です」
 
自身が起こした選択制夫婦別姓の訴訟については「女性記者たちが積極的に記事にしてくれて、自分が担ぎあげられている気がした」と青野氏は語った。実際に結婚する時に名義書換でその不便さを想像できるのは、圧倒的に女性が多いため、この問題に関心が高いのは当然だろう。