海のブルーに良く似合う、ピンク色のブーゲンビリア。太陽を遮るグリーンには、幸せの青い鳥が佇んでいる。生命力に満ちた“色”に溢れる南の地を訪れるなら、色鉛筆と真新しいスケッチブックを忘れずに。南洋に浮かぶアメリカ合衆国自治領の島で、あるがままの自然、人々の暮らしと出会った。

絵が教えてくれる、
豊かな彩りの景色。

マドック岬の入り江に浮かぶバード・アイランドを、展望台から遠くに望む。ここには観光客も多い。

優しい波の音と静かな鳥の声が、ゆっくりと朝を運んでくる。白い砂浜と透明なラグーンに驚くのは、「南の島は初めて」というイラストレーターで画家のエイドリアン・ホーガンさん。自国のオーストラリアと現在拠点としている東京との間に、こんなに美しい海があったとは、というのがサイパンの第一印象だった。

「白と青のコントラストの海は、オーストラリアの黄色い砂のビーチとは全然違う。サイパンならではの強い日差しの下で見る景色も、写真で見て感じていたスイートな南国のイメージと違って新鮮でしたね」

見たことがなかったという白いビーチを目の前に、早速、真っ白なスケッチブックのページを開いた。

小さい頃から建築家の父の職場で、白黒のスケッチに色を塗るのを手伝っていたという。趣味で続けていた絵を、本格的に志そうと決めたのは高校時代。その頃から、家だけでなく授業前の教室でも、時間さえあれば描くようになった。

「当時はファンタジー小説が好きで、キャラクターを描いたりしていました。描くことでいろいろな旅ができるのが好きだった。一人っ子だったのも関係があるかもしれません」

サイパンの海を彷彿とさせるマリアナブルーと、白のコントラストが美しい野鳥、キングフィッシャー。3羽同時に見ると幸せになると言われている。オブジャン・ビーチに行く途中で見つけた1羽。

生まれたメルボルンを出てシドニーの学校で本格的に学んでから、さらに絵を追求するために自分自身を成長させたいと、花屋で働いたり、青森で英語教師をしたり、わざわざ関係のない仕事をやった。

「手塚治虫さんが医師免許を持っていたように、面白い漫画や芸術は、いろいろな経験から生まれてくるのかも。だから若いうちになるべくたくさんのことをやっておきたくて。26歳で東京に拠点を移したのにも、そういう理由があります。下町やお祭りのカルチャーが好きだったから」

きっとこの旅も、絵の糧となるに違いない。エイドリアンさんは島に、まっさらなスケッチブックと、青系と赤系とで2つの筆入れに分けた100本の色鉛筆を持ってきた。普段から日本でも、仕事を始める前と帰りの電車の中で、毎日最低2枚は仕事以外の絵を描く。それは、どんな旅でも変わらないライフワークなのだと、海を描きながら教えてくれた。

「サイパンの海も、海以外も、いろいろ描いてみたい。道端でくつろぐ犬や、黄色いスクールバスや、ここで暮らすたくさんのチャモロの人も」