“よそゆき”ではなくて、
その土地の日常を知りたい

帯広駅近くの〈HOTEL NUPKA〉のカフェでコーヒーブレイク。ここは宿泊者以外も利用可能で、市民と観光客の交流の場として親しまれている。/HOTEL NUPKA 北海道帯広市西2条南10-20-3 ☎0155-20-2600 ※現在の営業状況は公式情報をご確認ください。

“旅のスタイルはどんどん変化していくもの”と岡本さんは言う。昔は海外に行くことが多かったから、たくさんの持ち物を大きなトランクに詰め込んで移動していたそうだが、5年ほど前から、夫とともに国内を中心に巡るようになり、愛用のトランクはバックパックに変わった。

「国内を電車で巡る旅も好きなんです。飛行機と違ってトランクを置くスペースがない電車もあるから、バックパックを持つようになりました。使ってみるとこれが結構便利で。気軽に移動がしやすいから、途中下車をして、いろんな町に寄り道しながら旅をすることも増えました」

帯広の住宅街にある薬膳中華の店〈春香楼〉は岡本さんの夫、仁さんのおすすめの店。滋味深い参鶏湯が体に染み渡る。/春香楼 北海道帯広市西10条南17-1-1 ☎0155-24-9013 ※現在の営業状況は公式情報をご確認ください。

全国津々浦々出かけるようになり、各地に友人ができた。彼らに「あそこがいいよ」「ここもいいよ」とおすすめの場所を教えてもらっているうちに地方の魅力に深く触れ、お気に入りの場所も増えてきている。

〈THE YARD〉ではキッシュプレートを。/THE YARD 北海道帯広市西8条南10-3-4 ☎0155-22-5740
〈THE YARD〉の一角には店主が選んだ雑貨も。

この旅が始まる前にも、北海道の東川町に住む友人の元を訪ねてきたばかり。その友人と一緒に来たという一軒家のカフェ〈THE YARD〉に案内してくれた。夫婦で営む小さなカフェは近所の人も通う心地のいい空間。ドアを開けた瞬間に、挽きたてのコーヒーのいい香りに包まれる。

「私たちの旅は観光というより各地の友達に会いに行く感覚に近いんです。彼らに行きつけの喫茶店やスーパーを教えてもらうと嬉しくなる。かっこつけたところばかりじゃ飽きるし(笑)、町の日常を知りたいから」

おにぎりがおいしいと評判の〈奥平米穀店〉。この日はあいにくおにぎりは売り切れ。「帯広にまた来る理由が一つ増えました」と岡本さん。/奥平米穀店 北海道帯広市西20条南4-14 ☎0155-41-4052 ※現在の営業状況は公式情報をご確認ください。

旅を重ねるうち、お気に入りの店がなくなってしまうという経験も。

「行きたい店や会いたい人がいたら“そのうち”と思わず出向くようにします。通うって大事なことですよ」

岡本さん自身、約2年前から千駄ケ谷でキュレーションショップ〈Pili〉のディレクションを手がけている。

“女主人が趣味でやっているブティック”をイメージした店には、作り手との密なコミュニケーションによって生まれた少数生産のアイテムや一点ものなどここにしかないものがたくさんある。そういったものとの出合いはもちろん、岡本さんとのおしゃべりを楽しみに、全国からたくさんの人々が訪れる。

夕張にある道の駅〈夕張メロード〉で見つけた〈北沢食品〉の「煮豆缶詰」。じっくりと煮た大粒の豆の歯ごたえとほどよい甘さが味わえる。/夕張メロード 北海道夕張市紅葉山526-19 ☎0123-53-8111 ※現在の営業状況は公式情報をご確認ください。

「好きな人には響くけど、そうじゃない人は素通りする店。でも、それでいいと思っています。ここでは流行に関係なく、好きなものを自由に身につける楽しさを発見してもらえたら。その気持ちは旅も同じ。旅だってマニュアルなんてないんだから、自由に楽しむ。これが一番です」

PROFILE

岡本敬子 Keiko Okamoto
アパレルブランドのPRとして活躍しながら、自身のブランド〈KO〉をスタート。ショップ〈Pili〉のディレクションも。著書『好きな服を自由に着る』(光文社)の続編を来年刊行予定。


●情報は、2019年11月現在のものです。
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Photo:Norio Kidera Text:Mariko Uramoto Edit:Chizuru Atsuta