見渡す限り美しい緑が広がる、北海道東部、十勝・帯広エリア。ここには動植物を手本にして生まれたアートや自然と共生した芸術作品がたくさんあります。豊穣の大地に息づくアートを巡るドライブ旅へ、服飾ディレクターの岡本敬子さんと出かけました。
十勝のあるがままの自然と
未来の暮らしを体感する。
2つのアートスポットを巡ったあと、この日の宿泊先〈メム アースホテル〉へ。ここはかつて競走馬を育てる牧場だった約5万6000坪の敷地を2018年にリニューアルした施設。
厩舎や牧草保管用倉庫など当時の雰囲気を生かして改修した建物、建築家の隈研吾や、国内外の学生が設計した実験住宅が建ち、建築ファンからも高い注目を集めている。ホテルのコンセプトに「地球に泊まり、風土から学ぶ」と掲げている通り、先進的な居住空間に宿泊することで、この場所でしか味わえない体験を提供している。
たとえば、隈が設計した『Même』は、アイヌの伝統民家“チセ”をモチーフにしたもの。壁と屋根に光を透過する断熱性の高い膜材を使った二重構造の建物で、蓄熱式床暖房を搭載し、室内の隅々まで快適な温度が保たれている。
『HORIZON HOUSE』と名付けられた実験住宅は、建物を囲む牧草風景を楽しむための居住空間。厳しい冬、雪に埋もれて窓からの視界が遮られることがないよう、建物は地上1m床を上げて作られている。おかげで一年中、屋内にいながら自然の風景が堪能できるという。
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また、馬とともに寝泊まりができる『BARN HOUSE』や、乾燥させた牧草の発酵熱を利用してエネルギーを自給自足することを目的とした『町まとう家』など、気鋭の建築家と国内外の学生によるアイデアを実現した住宅にサステナブルな暮らし方の可能性を垣間見ることができる。