〈神田日勝記念美術館〉では北海道出身の造形作家、吉田傑によるダンボール・アートとのコラボレーション展を鑑賞。骨格や毛並みも緻密に表現したダンボールの動物たちは今にも動き出しそうだ。/神田日勝記念美術館 北海道河東郡鹿追町東町3-2 ☎0156-66-1555 ※現在の営業状況は公式情報でご確認ください。

次に向かったのは、鹿追町にある〈神田日勝記念美術館〉。この町で開拓農民として生き、画家として活躍した神田日勝の作品を展示する美術館だ。

日勝は徹底的なリアリストであり、自身の周辺にあるものを題材に、家畜や農場などを力強い筆致で描いた。初期作品の多くは焦げ茶色のモノクロームの色調であることから、“十勝の大地に根ざした画家”とも言われている。

日勝はキャンバスではなくベニヤ板にペインティングナイフを使って描く。この画法を選んだのはベニヤ板にナイフを押し付けたとき、ダイレクトに伝わる感覚を好んだことと、制作費を抑えるためであったという。厳しい自然と向き合いながら畑を耕し、馬や牛の世話をして生計を立てていた彼は、貧しい生活の中でも絵を描くことを諦めなかった。

昭和30~40年代に活動した画家、神田日勝の作品を展示する〈神田日勝記念美術館〉。奥の壁に掛けられているのが日勝の最期の作品『馬(絶筆・未完)』。

彼の作品で最も有名なのが二本の前足で大きな体躯を支える『馬(絶筆・未完)』という作品だ。日勝は全体を大まかに描いてから仕上げるのではなく、顔から足、胴体に向かって描く。だが、この絵の制作途中に32歳という若さで急逝したため、腰部にさしかかろうというところでぷっつりと切れてしまっているのだ。

〈神田日勝記念美術館〉の外観は東大雪の山並みをイメージしたデザイン。正面には『馬(絶筆・未完)』のモチーフが。

「この絵の前に立つと、死の間際まで制作に取り組んでいた神田日勝の姿が伝わって、胸が締め付けられます」と岡本さん。馬の眼差しに吸い寄せられるように作品に向かい合い、静かな対話を続けていた。

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PROFILE

岡本敬子 Keiko Okamoto
アパレルブランドのPRとして活躍しながら、自身のブランド〈KO〉をスタート。ショップ〈Pili〉のディレクションも。著書『好きな服を自由に着る』(光文社)の続編を来年刊行予定。


●情報は、2019年11月現在のものです。
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Photo:Norio Kidera Text:Mariko Uramoto Edit:Chizuru Atsuta