リビングの
奥でテンポは
そのままに
キーが下がった
母の「おかえり」

こんにちは。歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。

2019年の第70回NHK紅白歌合戦で、「AI美空ひばり」による3D映像の歌唱が大いに注目を集めました。
ところが、故人である美空ひばりさんの歌声を模したAI(人工知能)への批判は少なくありません。多くの著名人やメディアから「倫理的に問題ではないか」「死者への冒涜だ」との意見が上がり、否定の世論が多く出ています。

しかし、僕はこうした批判に待ったをかけたい。
今回はAIの是非について考えます。

AI美空ひばり、賛成? 反対?

美空ひばりさんの没後30年にあたる2019年、「AI美空ひばり」はNHK主導のプロジェクトとしてスタート。ヤマハが開発した最新鋭の歌声合成技術「VOCALOID:AI」が採用されています。

彼女の最後のシングル曲『川の流れのように』を作詞した秋元康さんによるプロデュースで新曲『あれから』が作られ、“美空ひばりさんの歌唱を習得したAIが新曲を歌う”という、SF映画さながらの試みが実現しました。

「NHKドキュメンタリーよみがえる美空ひばり」HPより

しかし、唯一無二である美空ひばりさんの歌声を借りて新曲をリリースした取り組みに対して「故人の尊厳を損なう行為である」と批判が上がっています。
僕は思うのです。

故人は否定も肯定もできないのに、どうして一概に「故人の尊厳を損なう」と言えるのでしょう

もしもひばりさんが「私の音声を活用した音源のリリースを禁ずる」といった遺言を書いているなら、話は別です。あるいは、反対に「私の歌声が不死鳥のごとく復活した!すばらしい!」と称賛するかもしれない。

「ひばりさんなら、こう言うだろう」
「いや、そんなこと言うはずがない」
「AIが歌声を真似るなんて、ひばりさんは望まない」

そんなふうに片付けてしまうのは簡単です。
ただし、それらはすべて、遺された者の憶測に過ぎません。先進技術の是非を議論する上で、故人の意志を代弁するような批判は、あまりにナンセンス。

故人はYESもNOも言えないのが大前提なのです。