どこの会社にもいるだろう、やがて悲しき「チャラ男」について

狡猾なのに損をしてしまう
絲山 秋子 プロフィール

やがて悲しき「チャラ男」

『御社のチャラ男』に出てくるジョルジュ食品は、もちろん架空の会社だが、書けば書くほど話がいびつになり、書ききれないことが浮上してくるので、苦しい仕事になった。

 

後から似たようなニュースを聞いてヒヤッとしたり、現実に比べたらつまらないことばかり書いているような気がしてがっかりするときもあった。今なお古くさい慣行や筋の通らない方針がまかり通っている会社はたくさんあるが、小説で描いてしまうと、リアリティが薄れるかもしれないという不安もある。

一方で「チャラ男」については書いているうちに、どうにも憎めない存在に変わっていった。女性には隔てなく親切、見栄っ張りで負けず嫌い、偉い人には気に入られるのに男性社会には馴染みにくい、狡猾なのに損をしてしまう。

その複雑さと「やがて悲しき」姿が、とても人間らしいと思う。確かめたことはないが「チャラ男」はどこの会社にもいるだろう。そして、「チャラ男」の周辺では、必ずバカバカしい事件が起きているはずなのだ。

きっとこの小説には読者それぞれの「続き」があると思う。

読書人の雑誌『本』 2月号より