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この10年で人間は脆弱に…世界中を取材して見えた「最新の未来図」

『動物と機械から離れて』刊行記念インタビュー

「過労死が起きるほど、日本人は働きすぎています。しかし、これから人間はどんどん暇になるでしょう。AI(人工知能)が普及するからです。では、暇な世界は我々にとって幸せなことでしょうか?」

動物と機械から離れて: AIが変える世界と人間の未来』(新潮社)を上梓した編集者・菅付雅信氏は問いかける。

AIはこの世界をどう変えたのか? 人間を幸福にするのか? この10年で人間は脆弱になった? 研究者でも起業家でもない書き手による「異色のAI本」が突きつける、現実と未来とは――。

(取材・文:佐藤慶一、写真:杉山和行)

ケインズが予測した「100年後の世界」

2030年、人々の労働時間は週15時間になる――。
21世紀の最大の課題は、増えすぎた余暇である――。

経済学者のケインズは1930年、そのような予測をした。働きすぎの日本ではまだ現実味がないと感じるかもしれない。しかし、世界は少しずつ変化している。AIによって。

2015年、菅付氏は『物欲なき世界』で、先進国の資本主義の行方を描いた。先進国の都市生活者は過剰に働き、過剰にストレスが溜まり、過剰に消費しているという。

2015年のクリスマスには電通の新人女性社員の過労自殺が起きて大問題になったものの、いまだに日本企業のブラック労働問題は解決していない。働きすぎが解消される日は来るのだろうか。

『動物と機械から離れて』著者の菅付雅信氏
 

2011年、アメリカで『Race Against The Machine(機械との競争)』(邦訳は2013年に日経BP社より刊行)という本がベストセラーになった。以降、AIが仕事を代替すれば、人間は暇になるといった言説がたびたび見られるようになる。余暇をどう使うかということが恐ろしい問題になってくる、ケインズもそう言っている。

AIによって、社会はどう変わるのか、人間は幸福になるのか。消費からAIへ――。菅付氏の関心は地続きにスライドしている。膨大なリサーチ、さらには世界中の51名の研究者や起業家らへの取材を通して、未来をたぐりよせていった。

「『何をもって幸せとするか』を巡る価値観の対立は今まで以上に激しくなるだろう。これまでの見える価値=経済的価値を信奉する守旧派と、見えない価値=非経済的価値を提唱する新興勢力とのせめぎ合いはあらゆる局面で顕在化してくるにちがいない」(『物欲なき世界』より)

「急速に発展するAIが変える未来図と、それによって変化を余儀なくされる「自由意志」―わたしはそれを「幸福の追求」と呼びたい―の行方を巡る旅の記録(ジャーナル)だ。人間よりも賢いと思われる存在が誕生することによって、世界の何が変わり、何が変わらないのか。そして、わたしたちは来るべき世界にどう対処すればいいのか。それらを可能な限り明らかにしたかった」(『動物と機械から離れて』より)