出会って30分で口説き文句の連発

カオリンとその彼氏と一緒に、シンガポール名物のチリクラブなどを食べられることで有名なレストランに着くと、エリックが既に待っていてくれた。

見せてもらっていた写真の通り、素朴な顔立ちで爽やかな笑顔が印象的な35歳の男性だ。とても小柄な体つきとは裏腹に声が野太く、かなりの早口でマシンガントーク。独特の中国語訛りのある英語がとても聞き取りにくい。エリックが私の全身を舐めまわすように見ているのも、ちょっと気持ち悪かった

シンガポールといえば「チリクラブ」!ハサミを使いながら殻を割り、手で掴んでワイルドにかぶりつきます。写真提供/歩りえこ

とりあえず暑いのでビールを頼もうとすると、「ビールなんて安いお酒飲んじゃダメ!」と、高級赤ワインをフルボトルですぐさま注文するエリック。私はぬるい高級ワインより冷えたビールが飲みたいんだけどね……。

そして、30分もしないうちにエリックの口説きが始まった。「お手伝いさんがいるから、もし君が僕のパートナーになったら家事は何にもしなくていい。お金の心配はしなくていいから、君はホテルで友達とアフタヌーンティでもしていればいいよ」と、いかに楽に生活できるかを延々と語り出した。

レストランのお手洗いに行くときも毎回ついてくるし、若干ウザめだ。そして、夕食後はエリックの行きつけの人気ナイトクラブへ繰り出そうということになり、タクシーで移動するが、ここで事件が発生! なんとエリックが、財布をタクシーに置き忘れてしまったのだ。無制限使用のブラックカードがたくさん入っているという彼の財布。財布自体も高そうだったし、現金もたくさん入っていたらしく、半端じゃない価値がある。

エリックはさっきまでの自信に満ち溢れた態度から一転して、ありえないほどオロオロしだした。こんなときに申し訳ないが、「オーマイガー! オーマイガー!」と、連呼するその狼狽っぷりがとても人間らしくて、異次元に思えたエリックが普通の男性に見えて、なんだか可愛らしかった。

エリックは慌てふためいてカード会社やタクシー会社に電話をかけながらも、「君と初めて会った日に財布を生まれて初めてなくすなんて、僕は一生この日を忘れないよ!」と言った。こんな時でさえ口説き文句を欠かさないなんて、たいした男である(笑)。

30分後、タクシー会社から電話があり、財布が見つかった。なんと、カードも現金も全部無事。シンガポール、安全過ぎる。しかし、カードを全て止めてしまったエリックは取りに行ける明日まで一文無し。

それでもエリックの要望でナイトクラブへ皆で行くと、ツケ払いで光るドンペリをガンガン入れて散財が止まらない。これがシンガポール人投資家の日常なのだろうか? 湯水のようにお金を使うエリックは、やはり異次元に暮らす男性なのだ。しばらくして酔ったエリックが私に抱きついてこようとしたが、その度にトイレに避難してかわしていた。