ゴーン氏が裸の王様となり果て、日産を「植民地化」するまで

経営者としての「罪」の全貌
井上 久男 プロフィール

気温零度でも暖房がつかない

初の減益決算を受けて、筆者は来日以来の「ゴーン改革」の総ざらい的な取材をするために全国行脚した。

日産で国内最大の生産拠点である九州工場の従業員は筆者の取材にこう語った。

「冬のボーナス支給日に、生産ラインで流れる車のボディーに意図的に傷が付けられる落書きがあったり、蹴った足跡が付いたりしていて、現場は大騒ぎになった。しかもその車は、日産が販売に非常に力を入れているものだっただけに、ショックは大きかった。こんなことが起こったのは、私が知る限り初めてだ。

 

ゴーンさんの『コミットメント経営』の影響でしょうかね。今の日産の生産現場ではチームワークが欠けてしまった。組織での縦横の連携が弱くなり、個人プレーに走る人が増えてきている」

その従業員は、製造現場も過度な数値目標で縛られることに抵抗感が強まっていることが、証言したようなトラブルが起こる背景にある、と指摘していた。

日産九州工場(Photo by gettyimages)

「スカイライン」などを生産している栃木工場でも、信じられないような出来事が起きていたことを聞いた。ある女性従業員の父親がこう語った。

「06年11月のある日、気温が零度近くになっても、コスト削減のために、事務棟に暖房が入らなかった。残業していた娘たちはダウンジャケットなど防寒具を着て、震えながら仕事をした。お蔭で娘は風邪をこじらせて、救急車で運ばれた」。宇都宮地方気象台によると、栃木工場周辺の11月の最低気温はマイナス2・4度だった。

販売現場でも笑うに笑えないようなことが起こっていた。ある販売店の役員によると、自動車に載せるペットの犬用の小屋の販売にまでコミットメントが設定され、ペット用品の担当になると、新車を売るよりも犬小屋を売ることに注力していたという。

当時の日産幹部は「自分の目標に追われるので、全体の利益を見ずに『三遊間のゴロ』を誰も拾わなくなった」と嘆いていた。