もう家族のお金も頼れない…日本社会の本当の崩壊が始まる

出生数90万人割れの意味とは?
大内 裕和 プロフィール

もはや依存すらできない

第二に、「家族マネー依存社会」は様々な点で限界を迎えているということである。

「7040問題」や「8050問題」は生活を支える高齢者が亡くなれば、残された人々はたちまち困窮する。親亡きあとも親の遺体と同居し、死体遺棄事件につながる事例が、近年全国で続発している。これらの事件をヒントに、是枝裕和監督は話題の映画『万引き家族』を製作した。

「若年層の貧困化」は、親に経済的に依存することによって一時的に回避されたとしても、経済的自立の困難は未婚化や少子化をもたらす。2019年の出生数86万4000人は、1949年の出生数の269万人に対して3割強にとどまっている。

「若年層の貧困化」に加えて、2019年通常国会での「老後資金2000万円不足」問題は、人々の「出生抑制」行動を促進したに違いない。老後資金の不足を補うためには、「子育て」費用を削減することが必要だからである。

ここまでの急速な出生数の減少は、少子化どころか「再生産不可能社会」の到来を意味している。再生産不可能社会が持続不可能なことは明らかである。

 

「普遍的福祉」構築を妨げる分断と孤立

生活保護バッシングに典型的に見られるように、貧困に陥った人々に対して「自己責任」を強調する議論は現在でも根強く存在している。

「家族マネー依存社会」において生活保障が困難となるなかで、貧困層ばかりでなく中間層を含む多くの人々が、過酷な労働や社会への過剰適応を余儀なくされている。日常的な抑圧によって醸成されている不満やうっぷんが、生活保護利用者に向けられている面があるだろう。

中間層から貧困層へのバッシングが続くことで、社会の「分断」は強まり、生存権保障のための社会的連帯の構築は困難となる。また、「7040問題」や「8050問題」の深刻化は、現代日本において家族が社会から孤立している状況を示している。

家族を孤立状況から救い、すべての人々の生存権が保障されるためには、「家族マネー依存社会」から脱却できる「普遍的福祉」構築のための社会的実践が必要だ。

「出生数90万人割れ」の衝撃的事実は、現在の「家族マネー依存社会」では貧困を解決することができず、日本社会の持続可能性自体が脅かされている現状を鮮明に示している。
 

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