もう家族のお金も頼れない…日本社会の本当の崩壊が始まる

出生数90万人割れの意味とは?
大内 裕和 プロフィール

「家族マネー依存社会」の誕生

1990年代前半から急増した不安定雇用の若者を支えたのは、多くの場合その親や家族であった。

先ほどは若年と壮年の例を挙げたが、1990年前半の若者たちはすでに中高年世代となっている。当時の若者は2020年現在40代~50代となっているが、70代の親が40代の子どもを支えている「7040問題」、80代の親が50代の子どもを支えている「8050問題」が重大な社会問題となっている。

中高年の子どもを高齢の親が経済的に支えているが、周囲に助けを求めることができず、孤立している例が少なくない。

76歳で農林水産省元事務次官だった父親が44歳の長男を自宅で殺害した2019年の事件をはじめ、近年の家族内での悲惨な事件の続出は、現代日本の家族が追い込まれている状況を如実に示している。2018年初頭に大きな話題となった「はれのひ」事件においても、新成人の晴れ着を購入する親あるいは祖父母が大勢いたことは記憶に新しい。

ここでの若者や40代~50代の中高年世代を支えているのは「家族マネー」である。20代~50代までが「家族マネー」に頼って生きる現代日本社会は、「家族マネー依存社会」になっていると言ってよいだろう。

 

若者の貧困が正しく社会問題化されない理由

家族マネーに頼って生きることが当たり前のように広がっている「家族マネー依存社会」は二つの大きな問題を引き起こしている。

第一に、1990年代以降の「若年層の貧困」の社会問題化を妨げてきたことである。

若年層の貧困化は、1990年代以降の日本経済の低迷、そして雇用の規制緩和をはじめとする新自由主義政策によって引き起こされたものであり、若年層自身の「自己責任」の問題ではない。

「自己責任」ではないのだから、貧困を解決するためにはそのための対策が必要だ。
雇用については、非正規雇用の急増を避けて可能な限り正規雇用を増やすと同時に、非正規雇用でも生活できるだけの最低賃金の上昇(最低でも時給1500円以上)を実現する政策が求められる。

また多くの職場で年功序列型賃金制度が解体しているのであるから、教育、住宅、医療、介護、保育といった分野の「脱商品化」=「無償化」を進め、年々賃金が上昇しなくても「賃金+社会保障」によって生活することが可能なシステムを構築することが重要となる。

しかし、「家族マネー依存社会」が「若年層の貧困化」を社会問題化させなかったことによって、日本型雇用に替わる生活保障システム構築への動きは十分には進まなかった。

保育所・保育士の不足が深刻であることをはじめ子育てへの経済的・社会的支援は乏しく、高等教育への私費負担軽減策も十分には進んでいない。

親や祖父母の賃金や年金、資産によって「何とか生活できる」状態が近年まで維持されてきたことは、新たな生活保障システムをつくり出すよりも、従来型システム下での経済成長や景気拡大に依然として固執する大衆意識をもたらすこととなった。「アベノミクス」への人々の一定の支持は、そのことを示している。しかしそこには将来への確固とした展望は存在していない。

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